妙なるマイブーム

先日、お金が全然なくても一日ぐらいは過ごせることがわかった貴重な経験をした。
鍵を忘れて自宅を出てしまい帰宅しようにも家に入れなくなってしまったのだ。カギと一緒にカードの入った財布も忘れてしまい、買い物も喫茶店でコーヒーを飲むこともできず、わが家の大蔵省が夕方に帰宅するまで近くの本屋で時間つぶしをせざるをえなくなった。
本屋を梯子して、プログラムや人工知能の本を見たり、絶景写真集を見たりして時間つぶしをしていて、たまたま旅行案内のコーナーを覗いていると台湾一周自転車旅行のエッセイが目に留まった。
著者は「一青妙(ひととたえ)」とある。一青は珍しい苗字だが、歌手の一青窈や以前に仕事関係でこの姓の方から名刺をもらったことがあったから、石川県に多い人名であることは知っていた。
エッセーを立ち読みしてみると、台湾は別名「環島」という呼び名があり、この著者は台湾の名家の父と日本人の母を持つハーフの女性歯科医であることがわかった。いい年になってしまったので自転車旅行は無理だろうけれど、飾り気のない素直な文章に魅かれた。
帰宅してこの著者について図書館の蔵書検索をかけてみると台湾、特に台南や台東の旅行案内を書いた著書が数冊見つかった。試しに三冊予約して読んでみると、はまった!。

昨年末と今年二度台北を訪れたが、どうも台南や台東は台北よりもとっても面白い場所のようだ。
長年のあこがれだったオーロラを見てしまって次にもし時間ができて海外旅行に行くとしたらどこに行きたいか、特にあてもなく、タイかカンボジアの遺跡を観光してはどうかと漠然と思っていたけれど、この三冊を読んで台湾の南部や東部に行きたくなった。ここに昔ながらの台湾の姿があるようだ。カメラをぶら下げてのぶらぶら旅行にはうってつけのような気がする。
この著者はなんと、歌手の一青窈の姉だったのには驚いた。若くして亡くなった父親や母親のこと、家族のルーツを書いたエッセイもあるらしい。次に予約して読むことにした。

カギと財布を忘れたことがきっかけの帰宅困難と金欠で、思わぬ妙なるマイブームが到来した。