尾瀬ヶ原の二人キャンプ

先週末はカン君と二人で尾瀬ヶ原にキャンプに出かけた。
ちょうど沖縄から小笠原の沖へと台風6号がゆっくりと通過する梅雨の真っ最中に
もうきっと、これから先に何度も叶うことがないかもしれない孫のカン君と二人きりのテントを担いでの山中キャンプだ。
まるで老人と少年の物語のような二人だけの山旅だった。
歩き始めると天気の読みが当たり16日の昼には雨が上がり、ときどき陽が差す午後となった。
今年は雪解けが早くもうすっかり水芭蕉の季節が終わってしまい、
そのかわりによく見ないと気付かないほど小さなタテヤマリンドウの群生や
可憐で健気な山の花々の饗宴が広がっていた。
ところどころに咲くレンゲツツジの鮮やかな朱色が目を引いた。
雨に濡れていじけたワタスゲの果穂にはまだ夏は始まったばかりのようだ。
いつもに比べて見晴らしのキャンプサイトのテントはまばらだった。この雨と悪天予報のせいだろう。
日暮れが近づくと重たい雲が山の端を覆った。


夕食はお決まりのバーナーで炊いたおこげごはんとレトルトカレーだった。
文句も言わず黙々と晩御飯を食べるカン君。
食後は小屋でお風呂を借り、早々と就寝したテントの中は
フライシートを叩く雨音がうるさかった。
夜空の星を見ることができない雨夜だったのでせっかく担いできた三脚は役に立たなかった。
雨脚の去就が聞こえているのかどうか、カン君は爆睡状態。
カメラとレンズが重くて疲れ果てたのだろう。
夜中ふと気が付くとカン君の気配がない。
10歳の体はまだまだ小さくてくるまった寝袋の塊を見誤ったのだった。
予報が当たって日曜日の17日は、快晴だった。




今年はコバイケイソウの当たり年のようだ。この花が豊作の年は冷夏になるらしい。
ひときわ色の濃いアヤメやカキツバタは少しだけ咲いていた。
朝6時半にテントを撤収して出発。
東電小屋で小休止の、いつもの定番のコースを歩き、牛首を経て山の鼻に戻り、早めの昼食をとった。
持参の生卵入りチキンラーメンだ。
山の鼻からの最後の登りで汗だくになりながら鳩待峠には11時45分に着いた。
峠の氷レモンで生き返り、帰りは寄り道せずカン君を家に届けて我が家に着くとテレビでは「笑点」の真っ最中だった。
戸倉から鳩待峠までのバス賃は去年より50円値上がりして980円だった。
体力減退で失いかけていた山歩きの自信を少しだけ取り戻した気がする。
次はしばらく訪れていない尾瀬沼のほとりにニッコウキスゲを見に行きたい。