藤田嗣治展

朝、ほんの数分だけ丘の上の家々に日が当たり絵のように輝いて見えた。
台風24号が沖縄に近づいているので遠出は控え、上野の東京都美術館に没後50年を記念して企画された藤田嗣治展を見に行った。
週末の上野の森ではアートイベントが開かれていたが、風船は風に舞い、雨で人影はまばら。それこそ風前の灯状態だった。


ロイド眼鏡におかっぱ頭とちょび髭、およそ百年前にその後の日本人のイメージを決定づけた芸術家、Foujita
第一次世界大戦の勃発で、不安で退廃的な雰囲気が満ちたパリの街に現れた目新しいジャポニズムの具現者。
陰影の乏しい新時代の浮世絵を油絵具と墨で描いてみせ、時代の寵児となった「おどけもの」芸術家。

八十年に及ぶ生涯で残した百点を越す作品を見て回ると三時間が過ぎていた。
圧巻だった。
すっかり疲れ果てたけれど雨の中を銀座まで足を伸ばし、定番の七丁目ライオンで遅い昼食をとった。
銀座の歩行者天国も雨でそぞろ歩きの人影は少なかった。
薄着だったので少し寒いくらいだったが、店内に入ると中高年の熱気が溢れ、ビールとワイン、ドイツ風つまみやフィッシュアンドチップスで疲れを癒した。


(シュークルート、1980円)