長い間、スペインの地を歩いてみたいと思ってきた。
その理由はなんだろうかと、今更ながらに考えてみる。
妄想上のスペインは、情熱のラテンの国。
奔放で怠惰で楽天的で、残酷で猛々しい闘牛とスピリチャルなフラメンコの国。
多くの20世紀を代表する芸術家を生み出した創造の国であり、シエスタとワインと昼寝の国。
哀愁漂うギターの調べ。
かつてアジアやアフリカに多くの植民地を持ち、開拓者であると同時に、中南米の既存文化を破壊した侵略者であり征服者の国。
血なまぐさい内乱やテロ、敬虔な巡礼の道などなど、いろいろな顔を持つ理解不能の国。
フランスやドイツやイギリスとは違う、西欧社会では異端のイメージを持つ不思議の国のイメージが浮かぶ。
北アメリカやイギリスには仕事や観光で行ったことがあるが、いままで一度もヨーロッパ大陸には足を踏み入れたことがない。
もともと地理とややこしい世界史が苦手だった。
高校時代の授業ではカタカナの人名、地名が出てくるとはなから拒否反応が出て、生理的にまったく受け付けなかった。だから、トルストイやチェーホフやドフトエフスキーが読めなかった(でも、なぜか、カミュとサルトル、カフカは大丈夫だった。たぶん登場人物が少なかったからだろう)。
若い時分にはムーランルージュと華やかな文化の発信地であるフランスに行ってみたいと思った時期があった。第二外国語はフランス語を選んだのもそのせいだった。だんだんと年を重ねて、プライベートでヨーロッパに行くなら、西欧先進社会とはひと味違う、おそらく匂いの違う空気が吸えるスペインに行ってみたいと思うようになった。
人生後半の長期休暇と少しばかりの軍資金ができたので、行き先がスペインという以外は特別な注文なしに気楽な団体旅行を家内に予約してもらい、カメラをぶら下げて、10日間のスペインの旅に出かけた。
例によって事前学習はまったくなし。何も考えず行き当たりばったり、気ままな瞑想旅行の始まりだった。
【今回の旅の日程】5月10日(金)~5月19日(日)
【旅程】成田ーマドリッド(泊)ートレドーコルドバ(泊)ーグラナダ(泊)ーアリエスターバレンシア(泊)ーバルセロナ(泊)ーマドリッド(泊)ー成田