桜が散る

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桜散る

コロナウイルスが猛威を振るい、明日には内閣総理大臣が緊急事態宣言を行うようだ。

心から待ち焦がれた桜の花はいよいよ満開を過ぎて散り始めた。

明るい日差しの溢れる今日は近所の小学校で在校生のお迎えのない入学式が行われていた。

図書館に行く道すがら前の道を通ると、正門の周囲には入場できなかったこども達の家族が静かに集っている。孫の晴れ姿を見ることが叶わぬ老夫婦はどんなにか心残りだろう。

音もなく桜の花びらが舞う。風に乗ってふわり、ゆったりと時間が過ぎる。

さくら祭りが中止となって、いつもなら軒を連ねる屋台で賑わう川端に花見客は見えず、人声のない並木道で老木はひっそりと過ぎゆく春を見送っている。

明日に向かい成長する若い命と対峙するいのちの仕舞いを迎えるさだめ。

また次の春、桜並木を歩くことができるのかどうか。

また次の春、この花を眺めることができるのかどうか、

光る水面に浮かぶ花片がゆらゆらと流れてゆくのが見えた。