久しぶりの映画

このあいだの日曜日は台風10号の影響で大雨になる天気予報が大外れ、終日陽射しが強い眩しい一日だった。

天気が悪い予報だったけれど、せっかくの日曜日を一日家にいるのももったいないので、コロナ禍ですっかりごぶさになってしまった映画館に行ってみることにした。

我が家のすぐ目の前にも映画館はあるが、観たい映画がやっていない。

電車に乗って行く、いつ行ってもがら空きの三密とは縁のない、レアものを上映する映画館では、座席が一つおきの指定席になっていて驚いた。日曜日の朝一番の上映だったのに、それなりのいつもと同じくらいの人の入りだった。といってもせいぜい十数人といったところだけれど。

映画は視力を失いつつある78歳の男性が主人公の「ぶあいそうな手紙」というブラジル映画だった。生まれて初めてブラジル映画を観た。題名が、それこそ無愛想な映画だったけれど、内容は心に沁みる、余韻の残る映画だった。

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妻に先立たたれ息子家族とも離れて暮らす独居の老人がだんだんと視力を失い、同じく夫に先立たれた幼馴染のガールフレンドからの手紙をもらうことで話が展開する。葉巻をふかし口うるさく大声で話すチェス仲間の隣人との会話やたまたま出会った若いパンクな女性との出来事など、老人の侘しい一人暮らしが丁寧に描かれている。

視力が衰え字が読めなくなった主人公がこの若い女性に手紙を読んでもらうことで話が展開する。話は意外な結末へと進んで行く。

ブラジルの美しい地方都市の景色はまるでヨーロッパの映画を観ているようだった。映像とともに流れる音楽もブラジルらしく洒落ていた。

妻を失い生まれ故郷に帰国する隣人との別れ、鍵を盗まれなけなしの年金を盗られてしまっても若い女性との会話や手紙の代筆に心をときめかす老人の姿には切なさと微笑ましさがこみ上げてくる。

カメラワークも奇をてらわずに実直で観やすかった。脚本ともブラジルでは有名な女性監督によるものだった。

最近はめっきり映画館で映画を観なくなってしまったが、やっぱり映画はテレビでなくて大画面としっかりとした音響で鑑賞するに限る。

帰りに、これも初めてイタリア料理のチェーン店(・・・というよりファミレスか・・・)「サイゼリヤ」に行ってみた。

前日の昼のテレビのバラエティ番組で食レポの「まいう〜」が決め言葉のお笑いタレント石塚英彦が美味いと言っていたからだ。なんとワインが一杯百円だというからちょっと信じがたい。

味はそこそこ、格安の料金だけの価値はある料理だった。小さめではあるがピザのマルガリータが一枚三百円にも驚いた。エスカルゴのバター・ガーリック焼きが美味かった。

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これが最後と注ぐ冷酒の旨いこと   青羊