野沢温泉外湯めぐり

紅葉の戸隠高原鏡池

(北信濃野沢温泉は坂の温泉町)

昨日は立冬だった(11月7日)。寒暖の差が激しい日が秋の終わりを告げている。

今年は例年になく秋が短かった気がする。気候変動のせいなのか、暑い夏日が終わったとたんに晩秋になってしまった。あるいは秋の終わりはいつもそう感じているのかもしれないが、季節の巡りを肌で感じる年ごろになったのだろう。

曇りの日には肌寒くてコートを羽織りたくなる気候だが、日が差せばまさに小春日和、のんびりと日向ぼっこがしたくなる。このところ鼻アレルギーが気まぐれに襲ってきて、抗ヒスタミン薬を飲めば一日眠いし、気づかぬうちに居眠りに落ちてしまう。

行く秋を惜しんで、先週は立冬に先駆け二泊三日で北信の野沢温泉に腰痛封じの湯治に出かけた。アレルギーに加えて腰の具合がいまひとつの日々が続いている。まだ前期高齢者ではあるけれど、高血圧にアレルギーに腰痛持ちとなり、気づかぬうちに持病自慢の不健康老人になってしまった今日この頃だ。他の話題がないからついつい病気に気がいってしまうのだと思う。いよいよ健康寿命も終わりに近づいて来たような気がする。だから気分を変えることもボケ防止にはいい手段だろう。それには旅行が一番。腰痛も顧みずトコトコと鈍行列車の旅も味があるが、二泊三日の日程ではちょっと難しい。今回は晩秋の味覚を求めて道の駅巡りを兼ねての旅なので車で出かけることにした。文化の日の高速道路は予想外に混んでいた。予定の1.5倍以上の時間がかかり途中寄り道しようと思っていた松代の城跡や戸隠神社、道の駅はパスして野沢温泉に到着した。

もうそろそろ日が傾き始めた夕方近い四時過ぎに宿に着いた。泊めてもらう宿は「やすらぎの宿・池元」だ。町の中央バスターミナルのすぐ隣の、堂々とした大きな民宿だった。gotoキャンペーンのような地域振興の割引サービスで上品な旅館はどこもいっぱいで予約は取れなかった。きっと値段が高い旅館から予約が埋まったのだろう。庶民的な民宿では直前でも予約がとれた。行ってみると民宿はガラガラ状態だった。一人旅の老若男女(でも一人旅の女性を除くとほとんど男性高齢者)が旅人だった。割引キャンペーンのほかに地域で使える金券のクーポンがついていて、これらを差し引くとなんと民宿の料金はひとり一泊二千五百円あまりの計算になる。驚愕の超安値だ。こんなことはもうないだろう。

こじんまりした内湯は、源泉かけ流しの単純硫黄泉で、体が芯から温まりそうなよい雰囲気の温泉湯だった。これは腰痛に効きそうだ。でも野沢温泉は外湯が名物。温泉街のあちこちに外湯めぐりの湯屋が全部で十三か所ある。足掛け三日でいくつ浴びれるだろうか。

実をいうと野沢温泉に泊まるのは二回目だ、初回は大学に入った初めての冬、いまから五十三年前のことだった、隣接する野沢温泉スキー場で学生スキーの大会があって訪れた。長い津軽の冬を過ごすのに、関東生まれでろくにスキーで滑った経験もないのに、ほかにすることがなかったからと、無謀にもスキー部に入り、その初大会でこの地を訪れたのだ。スラローム競技に出場したが、滑り出して三秒で転倒して棄権した。あたりまえだ。あるいはこの時はスキー場近くの民宿かロッジに泊まったのかもしれない。まだ若かったので温泉にはまったく興味がなくて、温泉に入ったかどうかの記憶が全くない。結局、スキー部には大学卒業まで所属していた。二年目からはアルペンスキーをあきらめて体力勝負のノルディックに転向したのだった。

着いた日は外湯の「熊の手洗い湯」と「上寺湯」 に入って夜は民宿の内湯に入った。「熊の手洗い湯」は野沢温泉発祥の湯だという。お湯はけっこう熱い。源泉の温度はどこも70度以上だ。

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f:id:darumammz:20221109034354j:image(由緒ある熊の手洗い湯)
f:id:darumammz:20221109034358j:image(町角に茹で卵製造施設がある)

f:id:darumammz:20221109033349j:image(二軒目の上寺湯)

二日目は当初予定していて行けなかった戸隠神社奥社を参拝した。戸隠高原には以前に二回キャンプしたことがある。高妻山に登ったときも疲れてしまい戸隠神社奥社は参拝できなかった。心残りで、いつか訪ねたいと思っていたのだ。

信濃地方は秋本番。神社に行く途中の飯縄高原や戸隠鏡池の紅葉は見事だった。

飯縄高原の紅葉が見事

戸隠神社奥社参道

(奥社のお参り、ここは武芸の神様だそうだ)

江戸時代に将軍家によって植えられた杉の巨木の間の参道を登り念願の奥社のたどり着いたが、意外と近代的なコンクリートの社殿にちょっと肩透かしを食らった感じがした。昼は中社近くの蕎麦店「門前」で手打ちそばと天ぷらを食べた。これはうまかった。これでクーポンを使い果たした。

午後は野沢温泉に戻り「大湯」と「滝の湯」に入った。大湯は大き目の浴槽が二つあり熱めと温めの湯舟に分かれていた。頑張ってどちらの湯も浴びた。次の「滝の湯」は湯が緑色でやや熱めだった。二つの熱めの外湯に入って、湯あたり気味になったしまった。二日目の外湯めぐりはこれでギブアップ。品数の多い家庭料理が並んだ夕食をいただき、内湯に入らず寝てしまった。

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(湯舟の大きな大湯)

三日目の朝は快晴。窓からは下界を一面に覆う雲海とその向こうに朝日を浴びて薄紅色に輝く妙高山火打山が見えた。もう雪に覆われていた。野沢温泉街の標高は六百メートルでしかないが、眼下の千曲川沿いに真っ白な雲海が広がり、久しぶりに荘厳な絶景を眺めることができた。

雲海の向こうに見える妙高山火打山

5カ所目のミョウバンの湯の真湯

朝いちばんで外湯の「真湯(しんゆ)」に入りに行った。ミョウバンで白く濁った湯で、肌がつるつるになる温泉だった。これで外湯めぐりは終了。十三湯のうち五湯で終わってしまった。またぜひ訪れて全外湯制覇を目指したい。

帰りは道の駅に寄り道し、リンゴにラ・フランス、取り立ての天然キノコや菊の花などたくさんの現地産の農産物を購入し帰宅した。夕食は念願のキノコ鍋だった。これが大好物。日本酒がすすむ。

ハックルベリーでジャムを作る

翌日は朝から途中で購入したハックルベリーをゆっくり煮込んでジャムを作り、家内はイチジクを白ワインで煮て大好物のコンポートを作った。

気のせいかもしれないが、少し腰痛がよくなった気がした。