母の命日

今日は母の命日。今年で亡くなってちょうど十年になる。犬の散歩の途中に転んで骨折し、長い療養生活のあと脳梗塞を併発して寝たきりになってしまった母だった。気が強く、それでいて細かく気遣いのきく、めげない気丈な人だった。生前に、人一倍心配をかかけてしまったことが、いまでも悔やまれる。

昨日は天気も良かったので墓参りに行った。

この寒波で墓の花受けの水が凍っていて生花を墓前に生けることができず横にして置いて線香を灯し手を合わせて来た。

墓参りのあと足柄上郡松田町寄(やどりき)のロウバイまつりに足を伸ばした。使われなくなった茶畑跡に植林された蝋梅の花がちょうど見頃を迎える頃だからだ。濃い緑の茶畑の所々には、この寒波で降った雪がうっすらと残っていたけれど、地元集落の住人が丹精込めて植え育てた蝋梅林は一面の黄色に埋まり、清々しい香りが漂っていた。天気がよかったので日向は乾いており、暖かい陽射しのもと、木々の間に積もった厚い落ち葉を踏み歩くとなぜかしあわせな気持ちになる。楚々とした花と香り包まれて、気の早い春の先駆けを楽しみむことができた。

祭りには県内外から多くの観光客が訪れていた。日頃は人影も少なく、以前は低山歩きを楽しむハイキング客くらいしか訪れることのなかった静かな山間の集落は、この春を呼ぶロウバイ祭りで一躍有名になった。住民の地道な努力が実った、町おこし成功の好事例だろう。

(松田町寄の集落)

ロウバイ弁当、五百円也)

蝋梅は「梅」と名が付くが、バラ目サクラ科の植物ではなく、クスノキロウバイ科の落葉広葉樹で、原産地は中国だという。黄色く、やや艶があり、厚めの花びらが蝋細工のように見えるので蝋梅と呼ばれるようになったという。でも一説には、寒い「朧月(ろうげつ)」(陰暦の十二月)にウメの香りのする花を咲かせるからこう呼ばれるようになったとウィキペディアには書いてある。こちらのほうがなんとなくほんとうのような気がする。昼時だったので仮設の売店ロウバイ弁当といなり寿司を購入して店先の椅子に座って食べた。ロウバイ弁当はロウバイの花に似せて沢庵で黄色く色づけたお米にウメのふりかけがかけてあった。地味だけれど知恵を絞った微笑ましいお弁当だった。

今朝は遺影に般若心経を唱えた。

手に乗る小さな経本は昨年末にお参りした比叡山延暦寺で購入して来たものだ。わずか二百六十余文字のこのお経は日本で最も親しまれている経文で、日蓮宗浄土真宗を除く日本仏教のほとんどの宗派で唱えられているという。

読経には五分もかからないけれど、この短い経本に仏教の真髄が述べられいて心の平安と心身の安寧を祈願するにはもってこいだ。いつか般若心経について詳しくブログに書いてみたいと思う。