トラットリア・デ・ケンゾーでランチを食べる

奈良旅行に行ったり、仕事の予定もあったので、今年はまだ地元の桜を見ずに過ごしてしまった。そもそもこんなに早く桜が咲くとは思っていなかったし、全く予想外の季節の移ろいに、それこそ狼狽と言ってもいいような心境になる。地球温暖化のせいなのか、世界の破滅が近いのか、いやはや(とは少し大袈裟過ぎるかな)。

週の半ばではあるが、今月から水曜日は原則として仕事はしないことにしたので、昨日はもう盛りは過ぎてしまっているけれど大岡川に桜見物に出かけた。

弘明寺観音の商店街まで地下鉄に乗って、観音橋から河口に向かって歩いて行った。

満開を過ぎ、暖かい日差しにそよ風も吹いて小さな花びらがひらひらと白蝶のように舞う桜吹雪の中を少し汗ばみながら歩いた。大潮だからか、川の水は少なくゆったりとした流れに乗って桜の花びらが流れていた。

途中でカメラを構えた集団に出会したので、聞くとカワセミが来ているという。よく見ると対岸の茂みの端に翡翠色とオレンジ色をした野鳥がいた。飛び立つと重そうな長大な望遠レンズを装着したカメラ群が一斉にシャッターを切った。まさに春うらら。

下流からは観客を乗せた屋根のない遊覧船が上って来た。手を振ると、気がついて手を振り返してくれた。その後には色鮮やかなひとり乗りカヌーの集団が続いてゆったりと流れを遡って来た。「気持ちいいですかあ?」と叫ぶと「気持ち良いよう」と返事が帰ってきた。遊覧船もいいが、水面に近い小舟はさぞかし爽快だろう。

真っ黒い海鵜が澄んだ水に潜水を繰り返していた。水中を素早く泳ぐ姿が透けて見えた。

天気はいいがすでに満開を過ぎた桜並木は人影もまばらだった。でも風に吹かれて竜巻のように花びらが舞うこの散り際の散歩が一番気持ちがいいように思う。

蒔田を過ぎて中村川を分岐する辺りから川幅が増えて川はいっそうゆったり流れて行く。

日の出橋を過ぎると桜並木もまばらになって、いよいよ花見も終わりだ。

川辺を離れ、かつては通勤路だった伊勢佐木町の商店街を歩いた。通りの両側は見慣れぬ店舗ばかりになってしまって昔あった老舗はもうほとんどなくなってしまった。きっと長引いたコロナ禍が町並みを変えてしまったのだろう。馴染みがあるのは不二家のレストランぐらいだった。

商店街を抜け吉田橋跡の長い横断歩道を渡るといよいよ馬車道に入った。かつては時々昼休みに職場から歩いてくることもあった懐かしい通りだ。

関内ホールを過ぎて昔からある中華料理店「生香園」の向かいに数年前にできた建物の階段を登った二階にはイタリアンレストラン「トラットリア・デ・ケンゾー」がある。以前に一度だけ来たことがある。

ちょうど昼時になったので予約はしていないが駄目元で覗いてみた。幸い道に面したバルコニー席が空いていたのでここでランチを摂ることにした。12時少し前に入店したのが良かったのだろう、昼休みの時間になると次々と客が来て席が埋まっていった。

この店はパスタとアラカルト・メニューが豊富な店だ。南イタリア風の魚介料理が売りだという。店の名前にもなっているオーナー・シェフはかつてイタリアの古都フィレンツェで修行したらしい。イタリアンではあるが、ピザはない。ランチは前菜の盛り合わせとお好みのパスタと食後のカフェがコースになっている。アラカルトで頼むよりはお勧めだというのでコースを頼んだ。ソーダ水とパスが付いてくる。

魚介がふんだんなペスカトーレと四種のチーズで和えたペンネの二種類のパスタを妻とシェアして食べた。料理はとてもうまい。まさに絶品だ。量も十分あり、シンプルなコースでも満腹になった。食後のエスプレッソも旨かった。ランチとしては少し贅沢だが、ぜひ馴染みの店にしたい、とっておきレストランだ。これで今年の花見はこの上ない至福と共にフィナーレとなった。また来年も花見と美味しい食事ができることを願いつつ、最近出っ張ってしまったお腹をさすりながら帰った。