山から降りて青森県立美術館に行ってみた。はじめだ。
除雪がきちんとされていないバス停から入口まで滑りながら到達した。今は常設展だけで入館料は700円。
白一色の建物に入ると巨大な マルク・シャガール(1887-1985)によるバレエ「アレコ」の背景画に迎えられた。フィラデルフィア美術館からの長期借用品だ。これを観ただけでも訪問した甲斐があった。
バレエ「アレコ」はロシアの文豪、プーシキンの詩「ジプシー」(1827年)を原作とする物語。まるで緞帳のような4枚の巨大な手書きのテンペラ画に圧倒される。 1941年にナチス・ドイツの迫害を逃れるためにアメリカに移住した翌年に制作された作品だ。
この美術館のシンボルはなんと言っても奈良美智(ならよしとも)の「あおもり犬」だろう。季節がら雪に埋もれて館内からガラス越しの対面だったので並んで記念写真は撮れずちょっと残念だ。
この美術館は青森県出身の二人の芸術家である奈良美智と棟方志功がメインの美術館だ。(「ごんぼ掘り」の孫のハジメちゃんに似たイラストがあった)
奈良美智は弘前市出身の世界的な現代アートの旗手。村上隆と共に現在の日本美術を代表する双璧のひとりだ。我が家の住処に近い横浜市内の京急百貨店にもモニュメントが設けられているし、先日リニューアルした横浜美術館のオープン記念展でも大きな作品が展示されていた。横浜とも縁がある。(横浜美術館の「春少女」)
棟方志功の板画は圧巻だ。惜しまれながら昨年閉館した青森市内の棟方志功記念館のすべての作品が寄贈されている。貴重な足跡が散逸せず、それはそれで良かったのだろう。自由に写真が撮れるのも良い。貧しい青森の漁師の家に生まれながら志功の作品には板画にも肉筆画にも天性の明るく自由な生命力が満ちている。小さな画面から躍動する「いのち」が溢れている。
小規模な美術館だが特色がはっきりしているので訪れてみる価値がある。今回は大雪でパスしたが、すぐそばが 日本最大級の縄文集落遺跡、三内丸山遺跡なのでぜひ立ち寄ってみてもいい施設だと思う。
(注)「ごんぼ掘り」は津軽弁で、融通のきかないわからずや、わがままの意味