今日は上野の都立美術館にジュアン・ミロ展を観に行った。
朝一番の予約で出かけたが、それほど混んでおらずゆっくりと鑑賞できた。
ジュアン・ミロ(1893~1983)はスペインのカタルーニャ州に生まれた20世紀を代表する抽象画家のひとりだ。展覧会では約100点の絵画とオブジェ数点が展示してあった。
かつてスペイン旅行に行った際にバルセロナの街でミロ美術館に行こうとして迷子になってしまいたどり着けなかった悔しい思い出がある。
ミロの芸術世界はとても面白い。でも彼の作り出す詩的な独自の二次元絵画を理解するのは容易ではない。星や月はすぐ分かるが、表題に表されている女性や鳥や蛇を画面に観ようとすると困惑する。瞬時にこれらを認識するのは困難だからだ。
太い黒い線や青赤黄緑に彩られた抽象に近い図形は独特な音楽を奏でている。彼の言葉によれば彼の制作した品々は単なる抽象ではなく全て意味があるという。絵画や芸術はすべて詩であるという意図も理解できるし、暗い戦争の時代や独裁者が国を支配する状況で生み出された作品ですら暗さの中に明るい希望が感じられる。上品で繊細でありながら強靭な信念の元に彼の芸術が生み出されていることがよく分かる気がする。
ずっと絵を見つめていると、絵の中に飛び込んで描かれている不思議な要素と一緒に踊り出したい気になる、不思議な感覚を覚えるのだ。
似たような抽象風の作品を多く生み出したスイスの画家のパウル・クレーと比べてみると、クレーの絵画に流れる音楽lはゆったりとしたロマンチックなディヴェルティメント( 嬉遊曲)で、ミロの世界も同じように音楽的ではあるものの、音楽は絵画の背景を明るく演出するBGMとしての要素であり、主体は限られた画面の中を主題が縦横無尽に走り回る詩的で劇的な世界であるように感じられるのだ。
ミロの芸術は見るものに経験したことのない超然としたインスピレーションを生み出す。