桂林・漓江下りと龍脊峡棚田観光

黄布倒影(20元紙幣に
描かれる景色、興坪鎮)

10月10日から四泊五日の団体旅行で中華人民共和国広西チワン族自治区桂林に観光旅行に出かけた。

優麗な奇景の水墨画で有名な桂林の景色を直に眺めることが目的だ。

中国では国中を上げての喧騒に沸いた国慶節(中国の建国記念日の連休、春節と同様の2回のゴールデンウイークのひとつ))が終わり、静かな10月半ばも近くなのに雨降りの最終日を除き連日36℃の猛烈な真夏日の中での観光だった。亜熱帯のこの広西チワン族自治区では、今が金木犀の咲く観光に最適な時季のはずだが、この数年は以前と違い暑すぎる気候が続いている。このためこの季節に咲くはずの金木犀の花(中国名では桂花)がまだ咲いていない。キンモクセイは桂林の市花。桂花栽培は観光とともに桂林の経済を支える二大産業のひとつで、全世界の桂花のエキスを原料成分とする香料や香水などの製品の七割以上が桂林の産物を使用しているという。

行きと帰りにそれぞれ丸一日かかったので実質は現地三日間の観光旅行だった。

目玉は風光明媚な漓江下り、のんびり四時間の川下り。

滞在したホテルは漓江沿いのシェラトンホテルに四連泊で移動がなく楽だった。桂林旅行日程は以下の如く。

○1日目(10/10金曜日)

羽田空港第2ターミナル 9:05発 広州空港12:30着(日本時間13:30) バス移動 広州南駅14:50着 16:39発 高速鉄道移動(B1862) 桂林西駅19:30着 バス移動20分 食事レストラン20:00着 20:40発( 20分)シェラトンホテル着21:00

○2日目:漓江下り

ホテル朝食6:30 7:40出発 高田郷車窓見物 月亮山記念写真撮影 9:20 竹江船乗り場遊覧船乗船 11:30 昼食(船内バイキング) 13:30下船 陽朔船着場下船・陽朔西街徒歩観光 14:20バス乗車(復路・高田郷通過)15:30茶屋(土産屋) 発17:00 夕食市内レストラン(ビーフン料理)ホテル帰着

○3日目:市内観光

ホテル朝食6:30  8:00出発 8:20芦笛山鍾乳洞着(全長500メートル 山の山腹100段上り観光一時間) 9:05退出 桂花公社(私営博物館、キンモクセイのお土産屋)10:30発 象鼻山観光・散策 11:30 昼食(飲茶料理) 12:25発 ホテル帰着12:40 休憩 午後市内観光(16:30出発)逍遥楼(漓江展望施設)東西巷・正陽街散策 夕食18:00 ホテルにて桂花料理

○4日目: 龍脊棚田

ホテル朝食6:30 市内散策(漓江岸)集合出発 9:20 バス移動 2時間 段々畑・龍脊棚田観光 11:20バス乗場 12:30 現地観光用バス乗換え(15分) 棚田散策 昼食13:10 龍勝田舎料理(竹料理) 14:00 食後自由時間(散策)14:55 集合・出発 龍脊峡駐車場15:10着 バス乗換 市内レストラン直行17:25 夕食 広東料理 ホテル帰着18:40

○5日目:帰国

モーニングコール5:30 朝食なし(サンドウイッチ弁当と茹で卵に果物)6:20出発 桂林北駅へ 高速鉄道・桂林北駅 7:37発(D1891) 広州南駅10:40着(10分遅れ) バス移動 乗車11:05 広州空港着 12:30 広州空港発18:45(発予定14:15、4時間30分遅れ )全日空NH0924 羽田着  23:20 (予定19:45)自宅着  24:25

返りの航空便は羽田発広州折り返し便だったが、機種の不具合で羽田の出発が4時間以上遅れたため広州空港で4時間以上の待ち合わせ時間があった。幸い羽田第3ターミナル到着の最終電車の間に合ったので曜日は変わったけれどその日のうちに帰宅できた。

○漓江下り

漓江は桂林市資源県(しげんけん)に源を発し、桂林を北から南へと縦断する河川だ。桂林はすでに秦の始皇帝時代から開かれた二千年以上の歴史ある古い街だが、その景観から多くの文人墨客に愛され、彼らによって描かれた山水画によって世界中によく知られた観光のメッカである。とくに日本人にはなじみの深い景勝地だ。

川下りの遊覧船が列をなす

漓江の水量は少ない。水は澄んでいて、船上デッキから底が見える。旅行社が予約した大型遊覧船以外にも数人しか乗れない竹舟もたくさん浮かんでいた。太い竹をただ並て束ね船外モーターで移動する簡素な筏のような舟だ。これはこれで風に吹かれて快い舟遊びだろう。

季節による水量の多少で漓江下りの遊覧時間は異なるようで、もっともポピュラーな竹江から陽朔までの通常のコースでおよそ4ないし5時間だという。

デッキに出ると真夏日の日差しが厳しくすぐ汗が吹き出してくるが、乗った大型遊覧船内はゆったりとしていて空調も快適だった。船内でバイキング料理の昼食が供される。

九頭の馬が居るようにみえる九馬画山

漁をする人

次々と展開する特異な光景はまさに山水画に描かれている風景そのもの。直に眺めると描かれている水墨画にはまったく誇張がないことが実感できた。まさに奇景だ。心地よい四時間だった。

○龍脊棚田(龍勝棚田)

日本では龍勝棚田と表記されている龍脊峡、チワン族の営む棚田は圧巻。訪れるまでまったく知らなかったけれど、中国では米作りの故郷として有名な場所らしい。

20数年前から棚田の復興が始まり、現在ではこの地方有数の観光地になっている。

ひとつひとつの棚田には稲の苗が二筋植えられている。畝は狭い。ちょうど収穫時期を迎えて稲穂が美しい黄金色に色づき、穂が首を垂れていた。よく見ると穂に付いている稲穂の蕾が小さい気がした。

龍脊峡に広がる棚田

昼食に郷土料理の竹料理のご飯をいただいた。餅米の中に海老や豚肉を混ぜて竹に詰め、竹の鞘ごと焼いて食する郷土料理だ。

棚田の中につづら折りで開かれた迷路のような道には古い民家や農家が軒を連ねていた。急な階段や棚田に続く細道を歩いていると百年前にタイムスリップしたような感覚になる。

日本にも棚田百景にあげられている美しい棚田が各地にあるが、中国はスケール感がまるで違う。雲に隠れて見えない視界の果てまで続く光景には言葉に尽くしがたい感動があった。

○市内観光

桂林地区はカルスト地形に拓かれている。浸食によって奇岩や奇景がうまれ、地下にはあちこちに多くの鍾乳洞がみられる。

◯芦笛岩(桂林最大の鍾乳洞)

入口から出口まで500メートルの鍾乳洞、中はカラフルにライトアップされている。演出過剰で笑ってしまう。

芦笛岩入口

◯象鼻山(象山公園)

桂林市街を流れる漓江と桃花江の合流点にある街のシンボルの象鼻山、多くの観光客で賑わっていた。象が漓江に鼻を入れて水を飲んでいる姿に見立てた観光地。

象の鼻に見立てた観光地

○高田郷(こうでんごう)と月陵山

高田郷の景勝地

山腹に丸く穴が開いた月亮山

○繁華街見学

ホテルの近くの東西巷と正陽街を散策。屋台が賑わう最近になって再整備された繁華街だ。夜は大勢の観光客で賑わう夜市になる。老朽化したマンションを潰して最近出来た漓江展望台、逍遙楼に登り、市内を眺める。

正陽歩行路

逍遙楼(展望台)

東西巷

古い石垣が残る街角

靖江王府の城壁、今も子孫が住んでいる(今回は入らなかった)

○早朝の漓江岸辺散策

4日目の朝は時間があったので漓江の岸辺を散策した。市内を流れる漓江も水深が浅い。河の中程でも腰まで以下の水深だった。岸辺では小さな川魚を釣る釣り人、川中ではおそらく蜆のような貝をを取る人、浮き輪をつけて泳ぐ人がいた。流れは穏やかだ。

解放橋を渡りホテルの対岸を歩くと遊泳場があった。多くの高齢の男女が水浴をかねて泳いでいた。河は綺麗でゴミひとつ流れていなかった。

前日に登った逍遙楼はすぐそばだった

解放橋には多くの電動二輪車自動二輪車)が走っていた

遊泳場(水浴場か)

貝を採っているようだった

河掃除の舟だろう

杉湖、ナイトクルージンの発着場

桂林は人口500万人の中国では中規模(現地ガイドは小規模と言っていたが)の地方都市だ。たしかに上海や北京、広州などの人口2000万人を超える超巨大都市に比べれば、こぢんまりとした観光都市かもしれない。それでも2000年以上続く歴史的な街には美しい景観と情緒ある漓江の流れ、心癒される趣きがあった。中国特有の超高層ビルが少ない街中には不思議な安心感があった。景観を保護するために建物の高さが制限されているという。

解放橋と桂林の町並み

逍遙楼から

最近になって現代風に再整備された街路や再建された展望楼には古い歴史の面影は残っていないけれど、喧騒の中にもなぜかしっとりとした落ち着きを感じた。時代と共に変容する生き物としての街もその奥には普遍の時間を秘めているからだろう。観光旅行で駆け足で通り過ぎてしまう束の間の訪問者としてではなく、しばらく滞在して体の奥までこの地の大気を吸い込み奇岩やたおやかな流れを眺めてみたい気がした。残された時間には限りがあるが、次に来る機会があれば、スケッチブックを小脇に挟んで古い伝統を守る少数民族の棲む村々ものんびりと訪ねて回りたいと思った。