顔のこと

男は自分の顔を見る機会は少ない。
あさ、髭を剃るときぐらいしか、よく見ない。
夜中に薄明かりの中で鏡に映った自分の顔にびっくりすることがある。
鏡よ、カガミ、鏡さん。
「その中に映っているのは誰?」
「何を言っとるんじゃオッサン、おまえの姿やろーッ」
「本当ですか、ウソでしょ!信じられなーい」
とは言わないけれど、愕然とすることがあるのは本当だ。
「うーん、なかなか元気そうでいいねえ」と思えるといいけれど、
いつもその正反対。
これからは
「ようおっさん、爺さんになるにはまだ間があるぜ、頑張れヤーッ」
と、呟くことにしよう。
中学生の頃はニキビが気になってよく鏡をみた。
鼻の頭が赤くなるととっても恥ずかしかった。
人生の後半になって
ニキビもないのに鼻が赤くなって、いつ見ても不細工な顔だ。
少しは顔のことも気を使わないといけない年頃になったのだろう。
(・・・女でなくてよかったかもしれない。鏡を見なくてすむからね)