趣味を考える

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北海道在住の三男家に待望の長女が昨年十一月に生まれたので、初節句を迎えるのを機会に二泊三日のトンボ帰りで先週会いに行ってきた。三ヶ月をすぎた赤ん坊はおとなしくて、ニコニコと笑顔で迎えてくれた。同時にすぐに三歳の誕生日を迎える上の子の長男は反抗期でなかなか手強い時季を迎えていた。北海道の冬は想像通りの厳しさだったが、あらたな家族が増えた三男家は仕事も順調で、暖かい家庭を築いていてよかった。

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孫の相手もなかなか大変だ。一緒に遊ぶには体力と気力が必要だ。よる年なみで体力の低下を感じるのはしかたがない。腰痛に神経痛に老眼にもの忘れも、この年になれば普通のことだから、嘆くことなどなにもない。孫はどんどん大きくなるので、近いうちに年老いたジイジを相手にはしてくれなくなるだろう。それが少し残念だ。

孫との遊びに加えて、長年の生き甲斐いだったアウトドアでの山歩きやトレッキングの楽しみはだんだんと敷居が高くなってきた。

あらたにインドアの趣味に取り組めば、体力もいらないし、幸い住処(すにか)は確保されているから、日々の生活で役に立つ新たな趣味をみつけたいと思ってきた。都会に住んでいるので、趣味の選択肢はひろいけれど、費用がそこそこにかからず、楽しくて、成果が目に見えるものがいい。その意味では、インドアでもっとも手軽な趣味はなんと言っても男の料理だと思って実践してきた。

男の料理の鉄則はなんだろうか、と考える。まずは、すくなくとも準備や後片付けで同居人に迷惑がかからないことが第一だ。さらに、SDGsの一環としてのアイデンティティーを確立するには、うまくできても失敗作でも、作ったものはちゃんと残り物を出さずに食べてしまえることが大前提だろう。さらにもう一つの条件としては、費用がかからずに、自分の小遣いで食材が準備できることも重要だ。高級な国産和牛や特殊な食材が必要な料理は、高価だし、時には遠方まで買い出しに出向かなければならない場合が多いだろうから交通費もばかにならないし、最初から対象外だ。すぐ近くのスーパーマーケットで手に入る材料であることも重要だ。

いまは便利な時代で、直接図書館に脚を運ばなくても、読みたい蔵書が電子書籍になっていればすぐにしかも簡単にインターネットで図書館から借りることできる。最近の料理関係本のベストセラーである「土井善晴のレシピ100」(電子書籍版、学研パブリッシング)を借りてみてみるとそれこそ昭和の時代に私たちが母親に作って貰った定番の「お袋の味」レシピが並んでいる。まさに家庭料理そのものだ。ここに載っているおかずや料理を食べて私たちは育った。目から鱗のなじみのレシピが多い。あらためて、定番こそが重要なのだと気がつかされる。

コツコツと試した自作の料理レシピ集がそろそろ目標の77種を越えそうなのだが、この土井レシピ本を読むと、書き溜めたレシピも見直しが必要かもしれないと思えてきた。書き始めた頃のあまりにも幼稚な入門料理は削除して、もう一度初心に返ったほうがよいような気がする。

もうひとつのインドア趣味は音楽鑑賞だ。これもいまではインターネットのストリーミングによって、聴きたい音楽をすぐ聴くことができる。クラシックもジャズもフォーク・ソングも、なんでもござれだ。居ながらにして自宅の書斎で何時間でも、名だたる名演奏やなつかしい歌を好きなだけ聴くことができる。

料理にしろ、音楽鑑賞にしろ、家のなかにばかり籠もっていては認知機能やコミュニケーション能力の低下が心配になってくる。やはり家の外でも楽しめる趣味も捜さなければならないだろう。

先日、最寄り駅の改札口を降りた正面の掲示板にすぐ近くのホールで開催されているコンサートのポスターが目に入った。自宅から歩いて10分もかからないイベントホールではあるが、これまで足を運んだことがなかった。このホール(ほぼ音楽堂)では昨年末にあらたに二台目のスタンウェイ&サンズ製の新しいピアノを購入し、そのお披露目のピアノ試聴会が催されるとあった。よい機会なので、一度訪ねてみることにした。

ピアニストは三谷温(みたにおん)氏(昭和音大教授)だった。生の音楽は自宅でスピーカーやヘッドホンで聴くものとは全く違う。あらためての経験に感動した。よしこれだ、今後は生の音楽を聴く機会を増やすことしたいと思った。

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ということで、さっそく昨日は横浜馬車道関内ホール小山実稚恵さんのピアノリサイタルを聴きにいった(全席指定、3800円)。コストパフォーマンスは抜群だ。

第一部はシューマンアラベスク ハ長調 作品18と同じくシューマン:幻想曲 ハ長調 作品17(第1楽章、第2楽章、第3楽章)だった。いずれも初めて聴く曲だった。途中でちょっと眠くなってしまった。

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第二部はショパンだった。ノクターン第1番、ノクターン第2番、バラード第1番、ピアノ協奏曲第2番より第2楽章「ラルゲット」(ヤン・エキエル編纂ナショナルエディション ピアノソロ版)、ポロネーズ第6番(英雄)だった。いずれもいつも聴いているよく知った曲だった。さすがにすごい。一曲目から眠気は吹っ飛び、まさに感動の嵐だった。

アンコールは同じくショパンの小曲でマズルカ一曲とワルツ二曲だった。

二時間の短いピアノ鑑賞だったが、非常に中身の濃い有意義な時間を過ごすことができた。

趣味には生の音楽鑑賞がよい。しばらく戸外の趣味はこれで行くことに決めた。