尾瀬ーその2

いまでは尾瀬といえば水芭蕉と言われるほど有名ですが、これは「夏の思い出」という歌がはやったあとのことだそうです(夏がくれば思い出す〜、はるかな尾瀬・・・・、という歌)。水芭蕉にはたくさんの伝説や伝承があります。そのひとつ・・・、
ある人里離れた山奥に若い狩人が住んでいた。精悍で、冷静で、周到なこの若者は雪に閉ざされた冬にも山に入り、たくさんの獲物をとることで人々の尊敬を集めていた。秋の深まる頃、若者は近くの里から美しい花嫁をもらった。初冬のある日、若者はいつものように山に狩りに出かけた。運悪くその日から木枯らしが吹きあれ、山は吹雪となった。あくる日も、そのあくる日も吹雪は続いた。若い妻は寝食を忘れ、朝も夜も粗末な庵の前に立ち、嫁いだ日に身につけていた白無垢の花嫁衣装を羽織り、夫の帰りを待ちわびた。しかし長い冬の間、若者は狩りから戻らなかった。やがて力尽きた新妻は寒さの中で息絶えた。山里に若芽が息吹く春となり、ひと冬を山で耐えた若者がたくさんの獲物を携えて家に戻ると白い草木に姿を変えた新妻は夫の帰りが遅かった恨みを涙ながらに伝えた。若者は悲しみのあまり自らの命を絶った。あわれに思った山の神は、ふたりを偲んで雪解けの水際に新妻の姿に似せて水芭蕉を、若者の姿に似せてザゼンソウ(座禅草)を咲かせるようになった。
・・・という哀しい話が伝えられています(ほんとうかなあ)。