残雪の乳頭温泉郷

今年のゴールデンウィークは途中で通常の週日が入り前後に分断された。我が家はすでにセミリタイアの身分なので連休といってもカレンダー通りに行動する必要はないのだけれど、せっかくの年中行事だから忙しく働く人達にならって世の中の流れに従ってみるのも悪くないことだろう。

前半の昭和の日から四泊の予定で秋田県乳頭温泉郷に湯治に出かけた。宿は行きつけの黒湯温泉自炊棟だった。もし天気が良ければその後南下して野宿もできるようにテントと寝袋などキャンプ用品一式も車に積み込んで出かけた。黒湯までは所々で休憩しながら9時間半。遠いようで意外と近い。朝4時に自宅を出発して午後1時半には到着した。途中盛岡や雫石あたりの沿道では桜がちょうど満開だった。でも田沢湖高原の桜はまだまだ三分咲きから蕾だった。f:id:darumammz:20250506084901j:image

(帰る日にようやく花開いた山麓の桜並木)

関東地方以西の日本列島は晴天が続いてあちこちで早くも夏日も見られたのに東北地方は天気が不安定で秋田駒ヶ岳山麓では朝から霙や雪の降る寒い天気が続いた。風も強かった。

持病の坐骨神経痛に対する湯治とともにもし天気が良ければ乳頭山(烏帽子岳)やブナ林の散策を楽しみにして出かけたが今年は積雪が多く、天候が不順で大量の残雪で山道は雪で埋まっていた。

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乳頭山の登山道は雪で橋が崩落して通行止めになっていた。除雪された車道以外はまったく歩ける道がない。

昭和の生活が思い起こされるレトロな障子の戸が付いた和室に篭って、朝な夕なに温泉三昧の長閑な日を過ごした。インターネットがつながるので温泉後は落語を聴いて暮らした。ご贔屓の小三治と一之輔の長編落語を堪能した。

途中一日だけ晴れの日があったので弘前を訪ねてみた。田沢湖から弘前までは車でおよそ3時間。

弘前公園の堀端に続く桜のトンネルのソメイヨシノはすっかり花びらを落としていたけれど城址公園のあちこちに植えられた枝垂れ桜はちょうど見頃だった。公園内にはたくさんの屋台が出店していて、お決まりの三忠食堂の屋台で津軽蕎麦を啜り、野外ステージの津軽三味線に聴き惚れて東北地方の遅い春を満喫した。本丸からは残雪をいただく岩木山がくっきりと見えた。

花筏

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全国あちこちを旅していると、その地方の名前がついた〇〇富士と呼ばれるお国自慢の山を眺めることも多い。それでも地平線まで田畑が広がる広大な津軽平野に屹立する独立峰、津軽富士の威容は別格だ。単純な円錐形ではない、少し頂上がもっこりとした愛らしい山景にも心惹かれるものがある。桜吹雪が舞う五月の清々しい風に吹かれるとかつて暮らした50年前の青春の日々が甦る。老舗の和菓子屋(開雲堂)や伝統工芸品の美しい津軽塗を売っていた工芸品店(田中屋)はもうなくなっていて街中の風情はすっかり変わってしまっているが、昔ながらのパン屋(マタニパン店)では懐かしいパンが売っていた。この町で家庭を持って今年がちょうど50年。この連休の旅の初日が金婚式にあたる日だった。

あいにくの不順な天気で帰りは寄り道せずに真っ直ぐ黒湯から自宅に帰ってきた。この旅行での妻へのささやかなプレゼントは弘前公園で買った藍染めのブラウスだった。自分へのお土産はたまたま立ち寄った田沢湖駅前のスーパーマーケットで衝動買いしたウイスキー2本だ。f:id:darumammz:20250506093745j:image