秘湯苗場赤湯温泉山口館

海の日連休は金曜日も休みをとって、天気がよければ何処かの縦走登山を考えいた。
でも残念ながら全国どこも天気が不安定で、あちこちで豪雨警報が出てしまい、行けそうなところがない。
山登りは諦めて、秘湯を訪ねることにした。
行き先は苗場山麓の赤湯温泉山口館だ。
ここは歩いてしか行けないランプの宿で、まさに知る人ぞ知る秘湯中の秘湯だ。
自宅を朝6時少しまえに出発し、途中やはり登山を諦めて一緒に温泉に行くことになったW家夫妻と合流し、
苗場プリンスの先から林道に入り、車止めのある小日橋から小雨のなかを2時間15分歩いて午後1時過ぎに目的地の温泉小屋に着いた。

W家夫妻は立山にテント泊を予定していたが、この天気では立山・剱は無理と諦めたらしい。
沢沿いの道をのんびり歩いて行くのかと思っていたら、しっかりとした登山道で途中のピーク鷹巣峠までは結構な急な登り、そこからいっきに沢筋まで下る。
持病の膝が不調になった。
沢沿いに建つ温泉宿は、親子経営の山小屋だが梁も柱も立派な作りだった。
泊まり客は平日で雨のこともあり我々4人のみの貸切状態だった。

小屋主は所用で下山していて息子一人が留守番だった。
小屋はきれに掃除が行き届いていて、一階は薪ストーブを取り巻いて板間の広間になっている。
好青年の小屋番君(28歳)は理工系の大学を出てから3年間板前修行をして小屋の3代目となった変わりだねだ。シーズン中はずっと小屋に入って調理をしているそうだ。

早々と温泉で汗を流し、沢沿いの縁側に座って宴会状態になっていると、小屋番君の母親が登ってきた。
雨が強くなって外での宴会は切り上げてストーブを囲みあれこれ母親と話をした。
飾ってある写真を一枚一枚解説してくれて、まだ若かりし頃の皇太子の写真もあった。
山頂の小屋に泊まり、この温泉小屋には泊まらずに通通過しただけだそうだが、小屋主と一緒に撮った集合写真だった。一歳頃の小屋番君が沢沿いの温泉に入る写真が微笑ましい。
母親は日頃、里で薬剤師をしていて、3年ぶりに登って来たと言うことだった。
夕食はランプの下で、揚げたての野菜の天麩羅にウドや茄子の煮もので酒が進む。小屋番君はなかなかの調理の腕だ。

南魚沼産コシヒカリとキノコ入り手前味噌の味噌汁も絶品だった。

温泉は屋外に3か所あり、女湯(青湯)、男湯(薬師湯)と混浴の野天風呂(卵湯)が
ごうごうと流れる沢沿いに開いてある。
青湯と薬師湯は小屋掛けで外から見えないように設えてあり、湯船はどれも少しずつ泉質が違う。
照明がないので、日が暮れると蝋燭を灯した行燈を持参して入る。異界にいる感じだ。

野天の卵湯は結構熱くて(源泉温度は56℃と書いてあった)、明るいと手前の第二赤湯橋から丸見えだが
他に客もいないので女性陣はのびのび河原で朝の野天温泉を楽しんでいた。

まさに歩いてしか行けない秘湯だった。
一泊して、きた道を下り、まだ歩き足りないW家夫妻と別れ、
途中の猿ケ京温泉で町営「まんてん星の湯」に立ち寄り昼食をとって東京まわりで帰って来た。
年をとって山登りが出来なくなったら、全国秘湯めぐりも悪くないな。