雨の台北

腰痛はなんとか快方に向かい、コルセットをしながらではあるがほぼ日常の生活に復帰して仕事も再開した。
今回の腰痛はデスクワークのやり過ぎが原因のようだ。
以前からから決まっていたプレゼン仕事があって、昨日から三泊四日で台湾に来ている。
デスクワークはこの仕事の準備で原稿作成にコンを詰めすぎたことが直接の原因だ。
まだ腰痛の出る前にK氏が勧めてくれた仕事で、土日を挟んで二度目の観光もしたいと思い、
余裕を持って旅行予定を建ててあったが、仕事の本番に支障があっては困るし、腰痛悪化の心配もあるので、
無理はできないと残念な思いで飛行機に乗った。
飛行機の中で久しぶりに日本映画を観た(「君の膵臓が食べたい」)。
題名がグロテスクなので、あまり関心はなかったが、他に観たい邦画がなくて仕方なく選んでみた。
観てみると若者の恋愛映画(今風には言えば、切ないラブストーリー)だった。
ヒロインは不治の病、予想外の悲劇的な展開 …。あり得ないストーリーだったが、予期せず、目頭がジーンときた。
昼過ぎに降り立った台北市松山空港では横殴りの雨と風で出迎えを受けた。
二日ほど前に台風二十号が発生して台湾全土が大雨の真っ只中だった。
今回の宿は世界有数の高さ(二番目か?)を誇る台北101ビルのある信義地区のホテルに予約しておいた。
空港から直行して早々とチェックインし、夜まで風の音を聞きながら雨空を眺めて過ごした。
テレビを点けると、ずっと、各地の水害に関するニュースが流れていた。洪水や崖崩れで死傷者も多数出て大災害になっている。
夜になって少しだけ雨足が弱くなったので、近くの臨江街観光夜市に行ってみた。 雨で人影はまばらだった。
夕食には、道沿いに面した対面で食材を焼いてくれる鉄板焼き屋に入った。
人気の料理店らしく次々と地元市民が訪れて席が埋まり、賑やかな食事風景を眺めることが出来た。犬を抱いたまま食事をする客がいた。
コース料理を頼み、魚介や肉料理をたくさん食べ、缶ビールをひと缶飲んで、会計は一人分二千円足らずだった。
お好み焼きを除き、日本で対面の鉄板焼きは高級料理店でしか食べられないが、ここでは庶民の味なのだろう。気をつけてみるとあちこちに鉄板焼き料理店がある。
ホテルに帰るとベランダから超高層の台北101ビルが見えた。

仕事は明日が本番だ。
今日も雨が続く。雨の中、歩いておよそ十分ほど離れた明日の発表の会場を確認に行き、濡れながら帰りに中山公園(国父、孫文の功績を讃える公園)を観光し小さな食堂に寄り道して昼食を食べた。
あっさりした麺、小籠包、野菜の蒸し餃子が美味しかった。
台北の街は煤けた高層住宅がひしめき合い、その間に古びた街並みが点在する。
広い車道から小径に逸れると建て込んだ街角は生活の匂いに満ちている。
まさに東南アジアだ。狭いこの国の人々の大陸に負けない逞しく生きる力を感じる。
日が暮れて漸く雨があがった。昼食を食べすぎてお腹が空かないので夕食は抜きにすることにした。