今年の「山の日」は日曜日。振替で12日(月)が休日となって、世の中はお盆を控えて土日月の三連休となった。
今年は、「山の日」前日に湯の丸高原で焚き火キャンプし、翌日は朝日に輝く池の平湿原を散策した。
出発する時点ですでに圏央道は渋滞だったのでいつもの東名高速道から海老名を経て圏央道に乗る経路ではなく、久しぶりにずっと下道の国道16号線を走り、圏央道日の出インターから高速道に乗った。以後、渋滞はなく関越道から上信越道に入り、小諸インターチェンジにたどり着いた。高速道を降りて一時間で目的地の湯の丸高原キャンプ場だった。家を朝5時半に出て着いたのが11時過ぎだったので休憩を含めて五時間余りの快適ドライブだ。
さすがに山の日、キャンプサイトは巨大な持ち込みテントがたくさん設営されていた。我が家のような小さな山岳用テントは数えるほどもない。タープもない質素な装備を心配して長期滞在のキャンプ場の主のような老人に声をかけられた。
湯の丸高原キャンプ場は、山麓の原野に屋根付きのかまど施設と炊事場、水洗トイレが設営されたシンプルなフリーサイト中心の野営場だ(入場料大人440円、持込テント大1080円、中870円、小(ソロ)650円)。林の中にはバンガローや常設テントもあった。キャンプ場は木道のある臼窪湿原の外れにあたり、以前湯の丸山にレンンゲツツジの花見トレッキングに来た時、このキャンプ場の中を歩いたことがあった。キャンプは今回が初めてだ。
初秋の花である背の高いノアザミやワレモコウの咲く草はらは、下はボーイスカウトの少年少女から、家族づれ、上は高齢者団体まで多彩な訪問者で賑やかな週末を迎えていた。
早々とテントを張ったあとはもう木陰で椅子に座り、のんびり昼から持参の冷えたビールを飲んで過ごした。
このところ腰痛が一進一退であちこち歩き回るモチベーションが湧かないので、ただただノンビリするのが今回のキャンプの趣旨だ。十勝牛のステーキ肉とパエリアのためのシーフードも冷凍して持って来た。まさに食べて飲んでの、ぐーたらキャンプである。少し前なら考えられないほどの怠惰なアウトドアライフだ。暇つぶしに燻製セットを 用意してくればなお良かっただろうと思った。
炎天下の午後には酔い覚ましに、ぶらぶら歩いて片道10分の湯の丸高原ホテルの温泉に入りに行った。途中、ノリウツギやヨツバヒヨドリの花に美しいアサギマダラが集まって蜜を吸っていた。
貸切状態の温泉は透明で無臭だった。
標高が2千メートルあるので日陰は信じられないほど涼しい。陽が西に傾くと気温はぐっと下がって半袖シャツでは寒いぐらいだった。今回は都会の暑さで頭が鈍ってしまい、防寒具を持って来るのを忘れてしまった。薄手のダウンがあっても良いぐらいの涼しさだ。
夕暮れ前から焚き火を始めた。受付で購入した薪はよく燃えた。ひと抱えもある太さまちまちの薪は税込540円と超お買い得だった。あたりが漆黒の暗闇になるまで焚き火を続けたけれどまだ半分以上の薪が残った。雲が多く、そのうち半月も出て星空は眺められなかったので、老人は早寝早起き。というよりすっかり酔っ払って眠くなってしまった。
日が暮れるとどのテントも静かになって早々と人声が絶え、焚き火の音以外ではあちこちからイビキだけが聞こえる穏やかな夜になった。おそらく夜中の気温は17℃くらいだろう。薄手のスリーシーズン用寝袋がちょうど良いくらいだった。今年の八月も酷暑が続き、下界ではエアコンなしに眠れない熱帯夜が続く毎日だが、久しぶりに自然の冷気の中で熟睡できた。今回は自宅の枕も持参したのでまさにこの上ない快眠の夜だった。
翌日の朝、車で10分ほどのところにある池の平湿原に、散歩に行った。
すでに立秋も過ぎて夏の花は終わってしまっただろうと思って歩き出したが、梅雨明けが遅く気温の低い日が続いたためだろう、あたりはまだまだ夏の名残りのお花畑状態だった。アヤメやヤマオダマキ、コマクサが咲き残っていたのには驚いた。シャジクソウは初めて見た。
流石にシャクナゲは咲いていなかったけれど、駐車場で貰ったパンフレットに載っている夏と初秋の花、すべてを見ることができた。珍しい種類の高山植物を含めて、おそらく三十種類以上の花が見られたと思う。秋の花の代表であるマツムシソウは今が盛りでリンドウはまだ咲いていなかった。
(上段左から時計回りにニッコウキスゲとフウロやノアザミ、カワラナデシコ、マルバタケブキ、アヤメ、シャジクソウ、イブキジャコウソウ)
朝霧の流れる湿原に人影はなく、静かな夏の朝の散歩ができた。およそ二時間の清々しいトレッキングで久しぶりに解放された気分を満喫した。
あいにくと湿原周囲の夏雲が元気で、数日前に噴火したばかりの浅間山の勇姿は眺められなかった。
昼前にもう一度、温泉で汗を流し、湯上りにソフトクリームを食べた後、テントを撤収した。
せっかくなので昼食は小諸北インター近くの、いつも生蕎麦を送ってもらっている蕎麦屋「草笛」で食べたいと田んぼの中の農道を走り、店の裏の駐車場に車を入れた。
店の門前には空席待ちの客が溢れ、炎天下で一時間やそこら待っても、とても順番が回ってきそうにない。
諦めて、代わりにすぐ近くの蕎麦屋「治助」で盛りそばを食べることにした。こちらの蕎麦は草笛より更科に近い上品な味わいで、一枚で十分お腹いっぱいになる程、そばの盛りが良かった。
昨日来るときに寄った道の駅では、夏野菜やブルーベリーが格安だったので買って帰りたかったがすでに蕎麦屋を目指した途中で通り越してしまい、高速に乗る前にはもう道の駅も野菜市場もなくお土産なしで帰って来た。帰りの道も目立った渋滞はなく日が沈む前に順調に帰宅した。
帰り着いた自宅の中は大きな窓に西陽が当たり息ができないほど灼熱の空間となっていた。