五稜郭と函館山

三日目は長万部からまた鈍行列車に乗って函館に向かった。
薄曇りの中、貸切に近い列車がゴトゴト走る。
途中の駅はほとんどが無人駅だ。
高度成長期には産業を支えた重要な大動脈だったこの路線も今では歴史遺産のようにひっそりとしている。
バスと違って、乗降客がいなくても列車は律儀に駅に止まる。
鈍行列車の旅もまた味わいがある。

車窓から眺めた駒ケ岳は雲に覆われて頂上は見えなかったが、
原生林の中に時々、北の畜産農家らしいサイロのある景色が見える。

観光施設で賑わう大沼公園を抜け、出来たばかりの函館北斗駅で新幹線を横目で見ながら、五稜郭駅で下車して歩いて五稜郭公園に行った。

綺麗な五角形の城郭を五稜郭タワーの展望台から眺めると
満開を過ぎた桜の花びらとタンポポの花で城内は白と黄色の絨毯のように見えた。


まさに春爛漫。この後、城内を散策した。花びらが風に舞って素晴らしい。
五稜郭の散歩のあとは、市電に乗って湯の川温泉に向かった。
三日目の宿は、平成館しおさい亭という大きな温泉ホテルにした。

長万部の温泉宿から予約しておいた海辺の大規模旅館だ。
入り口を入るとロビーの目の前が海だ。生憎の薄曇りで青森は見えなかった。
部屋は山側だったが、遠くに北海道らしいなだらかな山波が見えて気持ちのいい景色だった。
食事はビュッフェでなかなか美味かった。

この間泊った熱海のホテルとは大違いで、白ワインを飲みながら舌鼓を打った。
最終日の今日は函館山に歩いて登った。

登山口から一時間で頂上の展望台に着いた。汗だくだ。
函館山にはたぶん45年ぶりだと思う。まだ結婚前に家内とデートした場所だ。
自分は弘前にいた頃で、家内は実家に住んでいたので
函館は時間的には家内の実家とちょうど中間点だったから、
数時間会うだけの短い時間のプラトニックなデートだったが、まさに青春の時代の思い出深い地だ。
頂上からは函館の町が一望できる。夜景が有名だが、今回は午前中にたどり着いた。

彼方の山の麓に函館北斗駅が見える。
山道の観音コースを下り、ハリストス教会や旧公民館のある異国情緒満点の元町地区を散策し、



(食べ過ぎた、すっかり太った)
有名な洋食レストラン「五島軒」でカレービュフェを食べた。
老舗のカレーは美味かったが、食べ過ぎた。
腹ごなしに函館駅まで歩き、駅前の市場を冷やかした後、バスに乗って函館空港に行き、
午後三時十分の全日空の当日券を買い、飛行機に乗って帰ってきた。
最初は開通したばかりの新幹線に乗って帰ろうかとも考えたが、あまりに時間がかかりすぎるし、料金も飛行機よりずいぶん高い。
飛行機は一時間半で羽田に着いて楽チンだ。正解だ。
帰りはやっぱり早い方がいいなあ。
確かに早いのは便利だが、鈍行列車の旅もまたのんびりして、楽しかった。
いつか青春18きっぷを買って、日本の端まで、行けるところまで行ってみたい。