上高地周遊

慌ただしい年度初めの4月がようやく終わった。
今年のゴールデンウイークは2日と6日が平日なので連休は3日ずつ
前半と後半とに分断されている。
長い旅行は無理なので前半は15年ぶりに上高地に行くことにした。
天気に恵まれたら再建された岳沢小屋か涸沢まで足をのばしたかったけれど
どちらも直前に雪崩があって危険そうなので
急きょ一度は泊まってみたかった明神池の嘉門次小屋に予約だけして
あとは行きあたりばったりで出かけることにした。
4月29日の午後、大正池から歩きだして河童橋を過ぎたあたりから
強風に粉雪も混じり横殴りの吹雪のようになった。
凍えるような寒さになり、近場の小屋を予約したのは正解だった。
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3時過ぎに小奇麗な個室に荷物を下ろし
去年できたばかりのヒノキの風呂で温まり
湯あがりに憧れの囲炉裏端で

名物の岩魚の骨酒を飲んだ。これは濃厚な味だ。

(囲炉裏のうえに吊るして時間をかけて薫製された岩魚は1匹千百円ナリ)
小屋特製の嘉門次と名前がついた酒二合に燻製された岩魚が1匹入って2千円だった。

(まるで岩魚のミイラが気持よく入浴しているような骨酒だ)
ついつい追加注文をして飲み過ぎてしまう。
囲炉裏が暖かい。そして煙い。
夕食の岩魚の塩焼きも美味かった。
翌日は早朝だけ薄日が差したけれどあとはどんよりで
登山は諦め上高地を周遊することにした。
小屋のすぐ隣の明神池は15年前は何もない池だったが

今では拝観料を取る観光地になっていたのには驚いた。


でも池そのものは静寂な昔のままの風情だった。
曇り空で景色は見えなかったが残雪の中の散策は愉しかった。

(横尾では橋もヒュッテも綺麗に新調されていた)
横尾まで往復して徳澤のキャンプ場で嘉門次小屋で作ってもらった握り飯と

摘んだばかりのフキノトウを入れた特製インスタントラーメンを食べていると
いきなり雷とともに大粒の雨の襲来。
徳澤園の喫茶室に逃げ込みコーヒーを飲みながら雨脚が弱まるのを待ったが
結局雨は弱くならず、諦めてずぶ濡れになりながら
上高地バスターミナルに辿り着いた。
春の山の天気は難しい。
のんびり沢渡で露天風呂に入り夜中の11時に帰ってきた。
景色には恵まれなかったけれど吹雪あり雷雨あり囲炉裏に骨酒ありの愉しい上高地周遊だった。