東京旅行

この数日、風は強いが明るい陽射しが降り注ぐ小春日和が続いている。

実に久しぶりに電車に乗って東京旅行に行ってみた。東京に行くのはほぼ二年ぶりだ。

銀座三丁目の紙パルプ会館内セントラルミュージアムで開催されている、妻の学校時代の友人が所属する書道会の師範展を訪ねるのが一番の目的だった。

書道の素養も、近世以前の唐や中央アジアの文化や漢字の歴史や知識、妻がもう三十年以上も続けている詩吟や漢詩鑑賞の世界にもとんと縁のない無教養な自分にも、展示されている作品群の圧倒的な存在感が理解できた。

単純ではあるけれど白と黒々とした墨蹟の奥深く精緻な世界に、分からないなりに感動した。

f:id:darumammz:20211114070007j:plain

小山峰心さんの作品

f:id:darumammz:20211113212605j:image

墨蹟鑑賞の後は、銀座から浅草に脚を伸ばした。地下鉄は景色が見えずにつまらない。ご贔屓のかっぱ橋商店街で、長年使っていたものを壊してしまったので自宅用のワイングラスを買うのが目的だ。重い荷物になるかもしてないので先ず犬印鞄製作所製のテント地のリュックサックを買った。これは妻の誕生日祝いにすることにした。

f:id:darumammz:20211114085333j:plain

昭和28年創業の老舗犬印鞄製作所製のリュックサック

軒を連ねるあちこちの店を覗き込んで探したが、量販品の安価な品ばかりで、気に入ったグラスには出会えなかった。商店街は小綺麗な今風の店が増えていて、毎日今も使っている食器を買った老舗洋食器店を見つけることが出来なかった。閉店してしまったのかもしれない。

f:id:darumammz:20211115194857j:image

はるばる浅草まで来て、浅草寺詣りもしないうちに、もう昼時をとっくに過ぎる時刻になってしまい、すっかり腹ペコで、神と仏に祈りを捧げるのはさておき、せっかくなので「駒形どぜう」で遅めの昼飯を食べた。

f:id:darumammz:20211113212700j:image

店の前で待つことおよそ二十分、一階の座敷でどぜう鍋の定食とサラシ鯨、鯉の洗いを食べた。冷たい瓶ビールが美味かった。続いて、日本酒の熱燗を飲んでしまい、すっかり酔っ払い老人になってしまった。

f:id:darumammz:20211113220130j:plain

コロナで人数制限をしていて店内はゆったりしていた

もうこれで完全に出来上がってしまい、お詣りもせずに東京旅行は終わりになった。以前はあれほど乗っていたのに、コロナ禍で随分と久しぶりになってしまった下りの赤い京急電車に乗って帰ってきた。

空のリュックサックを背負って、子供のように我先に車両に乗り込み、運転席のすぐ後ろの、まるでパノラマ席のような特等席に座ることができた。見晴らしは抜群だったけれど、気持ちの良い揺れと振動に誘われて、すぐに前後不覚の眠りに落ちてしまった。

揺り起こされて気がつくと下車駅に着いていた。久しぶりの電車の旅だったのに、日暮れにはまだ少しある美しい午後の陽射しに映える景色を見ずに帰ってきてしまった。ちょっとだけ心残りはある短い旅だったものの、楽しい東京旅行ができて良かった。