西インドにカレーを食べに行った

もう、あといくつ年を越せるかが定かではない年ごろになったので、年末年始をどうやって過ごすか、新たな正月をどこで迎えるかを考えるのが、この数年の我が家の年中行事となっている。

今年は妻が西インドのラジャスタン地方という美しい町を歩いてみたいというので、これまで何度か利用しているS旅行社のツアーを申し込んだ。しかし、残念ながら、予約締め切り日になっても、参加申し込み者が定員に満たず、このプランは催行中止になってしまった。早々の11月半ばにして、この海外旅行計画はあえなく消滅してしまったので、第二の案は国内旅行を考えることにした。まずANAの早割超格安航空券を利用して九州・宮崎に飛び、「青春十八きっぷ」を購入し、九州から京都まで鈍行列車を乗り継いで、京都で年越しのプランはどうか。とりあえず宿の確保が難しい京都の宿泊先を確保することが必要だ。運よく、京都駅前の定宿「松本旅館」の年末年始の予約は取れたので、ほぼこれで年取りプランは決まりとなるはずだった。昨年、一昨年もこの旅館で元旦のおせち料理をごちそうになっている。京都での年越しは我が家の正月の定番だし、あちこちの神社やお寺の初詣も無事に新たな年を迎えた喜びを味わうのにふさわしい。のんびりの列車の旅も大好きなので、九州高千穂峡は観光したことがないし、妻はいちども宮崎の地を踏んだことがないので一度は訪れたい場所だと言うから、このプランはなかなかよい案だと自画自賛だった。

年末が近づいて、執念深くインターネットで同旅行社の旅行案内をみていた妻が、行きたかった西インドのラジャスタンではないが、インダス文明の遺跡や古い町並みを訪ねる別の西インド旅行プランに空きが出たので、そちらはどうかと言い出し、はたまた大展開の次第。また再び催行中止になってしまうかもしれないので、とえりあえず京都の予約はそのままにしてダブルブッキングで、西インド・グジャラート州10日間のツアーを申し込んだ。

妻はすでに三回のインド旅行の経験があり、南と北インド東インド(紅茶で有名なダージリンと旧王国のシッキム地方で、ここは夫婦で行った)には行っているが、西インドは未経験なので、東西南北すべてを制覇することがここに行きたい最大の目的のようだ。
インド亜大陸にはどうも、特別な魔力があるらしい。昔からインドを訪ねた人はインドが大嫌いになるか、大好きになるかのどちらかで、二度と足を踏み入れたくないものと取り付かれたようにリピーターとなるかのどちらかだいうことを聞いたたことがある。結局、このプランは催行が決まり、令和5年から6年の年末年始は西インド・グジャラート地方への旅行に行くことになった。ようやく取れた京都の旅館は予約をキャンセルした。自分はまだ前述の一度しかインドの地を踏んでいないが、訪れた東インドダージリン地方と旧シッキム王国は、喧騒と混沌のインドのイメージとは程遠く、緑豊かで美しい町並みと洒落た欧風ホテルでの宿泊、高地に建つ整然としたチベット仏教寺院を訪ねる旅行だったので、特別にインドが好きでも嫌いでもないというのがその時の印象だった。

インド・グジャラート州カッチ地方の中心都市ブジのカレー・ランチ

自分にとっては2回目のインド訪問の目的は本場インドのカレーを堪能することにしたいと思って旅支度をしていると、直前になって大変な事実が判明した。西インドグジャラート州は法律で飲酒が禁止さている。宗教上の理由で、肉、魚、卵は食べないし、提供もされない。レストランではビールはもちろん、アルコール類のいっさいが外国人にも提供されず、食事は基本的に野菜料理のみで、肉も魚料理も提供されないという(実際に行ってみると、確かにこれは事実だった)。外国人の自分用の酒の持ち込みは自由のようだが、基本的には自室以外での飲酒は禁止だ。これは大変なことになる。本場の辛いカレーを食べながらビールも飲まずという、前代未聞の、一週間以上にわたっての苦行の旅に耐えられるだろうかと眠れないほど不安になる。40数年前に交通事故による怪我で二十日間入院した時以来の、ましてや健常時の長期間の禁酒という未経験、未体験の修行旅だ。この旅行は相当の覚悟が必要だと直前になって判明したのであった。

ちなみに日本を離れる直前の三日間は、ローストチキンとホタテのリゾットと赤白ワイン、カニ鍋に冷やで秋田の日本酒<福小町>、浅草駒形のどぜう鍋に熱燗徳利の手酌と瓶ビールを連日で食べまくり、飲みまくって、究極のビールなしカレー堪能旅行の直前まで体調を整え、まさに鯨飲馬食、万全の準備で旅に臨んだのである。

手羽先のローストとホタテのリゾット

カニ

浅草駒形どぜう鍋

角が丸いインドのバンニ地方の水牛(バンニ牛)

西インド旅行地図

旅行の日程は次のようだった。

12月29日自宅(5:20発)ー(電車・リムジンバス)ー成田空港(7:15着 11:30発)ーデリー(Dheli)空港(現地17:45着)市内泊(時差マイナス3.5時間)(Hotel DEVENTURE SAROVAR PORTI CO)

12月30日デリー(5:30発)ー(空路)ーアーメダバード(Ahmedabad、現地ではアフマダバードと発音)空港(7:45着、9:00発)ー(以後、バス移動)ーロータル遺跡見学(Lothal 、インダス文明遺跡)(12:00着、14:00発)ーバブナガル(Bhavnagar)(17:00着)泊(Hotel EFCEE SAROVAR PORTICO)

12月31日バブナガル(5:00発)ーパリタナ(Palitana)・シャトルンジャヤ山観光(Shatrunjaya、ジャイナ教最大の聖地(7:30着、12:30下山、14:15発))ーラージコート(Rajkot)(19:00着)泊(Hotel MARASA SARVAR PORTICO)

1月1日ラージコート(8:00発)ーカッチ地方(Kachchh)・ダマルカ村(Dhamadka)(12:15着、アジャラック・プリント見学)ーブジ(Bhuj)(15:30着)ーブジ旧市街観光・スーパーマーケット買物ーブジ泊(hotei ILARK:3連泊)

1月2日午前中待機・ブジ市内徒歩散策ー午後ブジ近郊・カッチ地方観光へ出発(11:30発)ールドラマタ村(Rudramata)ダム湖畔ホテルランチ(13:00)ーニローナ村(Nirona)見学(カウベル工房、木工工房、ローガン・アート、カッチ織工房)ーホテル帰着(19:00着)泊(Hotel ILARK)

1月3日ホテル(7:30発)ー大カッチ湿原(塩原観光 10:30)ーカビール島ドーラビーラ(Dholavira)遺跡(11:00着)、インダス文明遺跡・博物館見学)ービレンディラ村観光(16:20着)(メグワル族のパッチワークとミラー刺繍)ーブジ・ホテル帰着(18:00着)泊(Hotel ILARK)

1月4日ブジ(7:45発)ー(ダマルカ村トイレ休憩9:50)ー(マリヤ(Maliya)ドライブインお茶休憩11:00)ーバジャナ(Bajana)(13:10着)(ホテル・チェックイン)ー小カッチ湿原ジープサファリ(15:00~18:50)ーバジャナ(Bajana)泊(Hotel RORAL SAFARI CAMP)

1月5日バジャナ(8:00発)ーモデラー(Modhera)観光(太陽寺院、10:00着、11:20発)ーパタン(Patan)(12:00着)ー市内施設観光(パタン織工房(12:15~13:30)、ランチ(13:30~15:00)、女王の階段井戸(Rani ki Vav))(15:00~15:50))ーアーメダバード(19:30 着) 市内泊(Hotei LEMON TREE)

1月6日アーメダバード市内観光(スワミナラヤン寺院、金曜モスク(ジャマ・マスジッド(Jama Masjidi)、インドで最大のモスクのひとつ)、ティーン・ダルワザ(Teen Darwaza、王宮の門)、シディ・サイヤド・モスクのレリーフ見物(Sidi Saiyad Mosqu)、ダーダ・ハリ階段井戸(Dada Hari Ni Vav))ーアーメダバード空港(16:00着 19:50発)ーデリー空港(成田空港行き乗り継ぎ 23:30発)

1月7日成田空港(10:05着、11:40発)ー(リムジンバス、電車)ー自宅(13:30着)

ということで、なにはとまれ無事に七草がゆの正月7日に帰国した。

旅の詳細は暫時、書いてゆこうと思う。