神津島の山だより

神津島は神の集う島が名前の由来である。

積年のあこがれの島にやっと行くことができた。
暮れの29日夜22時に竹芝桟橋を出港したさるびあ丸に乗って東京湾を出って行く。

この晩、海はべた凪で全く揺れず伊豆大島沖で日の出を迎えた。
船は神津島に2つある港のうち集落に面した前浜港に着岸した。
島を訪ねた最大の目的は天上山に登ることである。
高さでは574メートルと丘のような山だけれど
洋上に屹立する花崗岩の頂にはこの島独特の風景がある。
黒島登山口から登ると港に面した小さな集落が一望できる。

神津島にはこの集落しか人の住む場所はない。

登山道はシダに覆われていて洋上に浮かぶ峰独特な風情があった。

頂上は切り立った尾根に囲まれていて

(千代池・センダイイケ)
そこかしこに雨水をたたえた小さな池が点在する。

(裏砂漠)
火口原には真っ白な花崗岩の砂からできた砂漠のような広場があり
砂地の間には赤い実をつけた灌木が生い茂っていた。
花の百名山にあげられているオオシマツツジは葉を落として
そこかしこに寄り添うように細い枝を伸ばしていた。

屹立した尾根の向こうははるかに広がる太平洋だ。
伊豆七島の島々は点々と海の中に頭を出している。
下山は崩落する白い岩壁に沿って茂っている椿の林の中の道を辿った。
椿の葉で日の光が遮られて薄暗い登山道を枝から落ちた赤い椿の花が埋めていた。
白島登山口へ下り集落への道を歩くと

天上山が壁のように迫っている。
午後からは風が出てきて予定していた温泉センターへの散策はあきらめて民宿に帰った。
夜になるとこの時期特有の島風が強まり
一晩中、嵐のような風の音がした。