感動の講演

四国・四万十川のほとりで地域医療と在宅医療で活躍する
大野内科医院の院長小笠原望氏の講演を聞いた。
自らを「四万十川のゲリラ医者」と呼んでいる講演はかけ値なしで感動的だった。
朝日新聞に折り込まれている月一の小冊子「スタイル・アサヒ」に
すでに60回以上連載が続く「診療所の窓辺から」の愛読者なので
ぜひ講演を聴きたいと思っていた。
医師としての生きざま、地域の医療への思い、看取りの医療のこと、命の仕舞のこと、
とつとつと語る患者との暖かいやり取りのなかで、命の定めとして死が訪れることを
終わりではなく誰でもが巡り合う通過点としてとらえる視点。
会場の参加者の緊張がすすむと緊張を和らげるように氏が歌い出す、
故郷や赤とんぼの歌。会場の参加者がみんなで歌う。
1時間半の講演は四万十川の光景をバックに
まるでドキュメンタリー映画を観ているような心が洗われる体験だった。
青春の昔話、いまある進行形の四万十の日常、美しい自然のなかで繰り広げられう人々の
命にまつわる話、すべてに涙が出るほど感動した。
生き物が命の決まりのなかで時間を過ごし、トンボが飛びホタルが光り、
暗闇の地方の夜を車を走らせて訪れる訪問医療と臨終の光景、
とてつもなく長く生きて来た人々とのこころ暖まる挿話、決められた結末ではあっても
人ひとり一人のそれぞれの仕舞い方が、「ことば」で繋がることをしみじみと語り
つつましい日常やそれを支える医療者としての襟を正した姿が、謙虚に奢りなく伝わってきた。
今日はいい時間を過ごせた。