北八ヶ岳に雪がない

年明け早々の週末は成人の日で三連休になった。
連休初日の1月6日(土曜日)は一泊で電車とバスを乗り継ぎ北八ヶ岳に写真を撮りに行った。
北横岳ヒュッテの主人ご夫婦は元気で、正月明けにも関わらず小屋は泊り客で盛況だった。
小屋の大広間は去年、模様替えして椅子席になっていた。
三年ぶりの冬シーズの訪問だったのでとりあえず健在な姿を見てもらうことができてよかった。
今年は極端に雪が少ない。蓼科の山道や北八が岳ロープウェイの駐車場にまったく雪がない。
北陸や東北地方の豪雪情報が嘘のようだ。


雪が少ないのにロープウェイはスキー客でけっこうな混雑だった。
あいにく午後になって雲が広がり夕焼けは期待できず
山頂駅からのわずかな登りでバテてしまったので午後三時に小屋に辿り着いても早々と登頂は諦め、
すぐにいつものように薪ストーブの傍に陣取り、ウイスキーを飲んでまったりと日暮れまで過ごした。
まさに贅沢な1日だった。
すぐ近くの大岳までピストン予定で朝出かけた前日の泊り客から体調が悪いのでもう一泊したいと小屋に連絡があり、日が落ちてあたりが暗くなっても戻ってこない。
同行の連れは早々とひとりでさきに下山してしまい、安否を気遣う連絡が小屋にあったので、ちょとした遭難騒ぎになった。
緊張の時間となったが、ご主人の健さんが捜しに行き、大事に至らずに収容できてなんとか無事に一件落着してとりあえずは良かった、、、。

夜半は小屋が揺れるほどの強い風が吹いた。
いつもの日常と同じ午前四時には目が覚めたが、きっと天気予報どおり吹雪で景色は期待できないとあきらめかけて、
念のためまだ漆黒の小屋から外に出てみると、雪は止んでいた。
風はあるが東側のわずかに明るくなった夜空に星が瞬く快晴だった。
そういえば、夜中に月明かりで窓がかすかに明るいように感じた。
しまった。これは大変だ、ぐずぐずしていられない。慌てて機材を担いで日の出前に山頂を目指した。
山の天気はまったく予測不能なことをあらためて実感した。





どんどんと夜が明けてくる。
頂上直下で、すでに東の空には朝焼けが広がってきた。
南峰も北峰も風は強いが立っていられないほどではなかった。
寒さのためだろう、カメラのオートフォーカスがうまく働かない。
たぶん体感温度は零下20℃をはるかに下回っているだろうと思う。
手袋をしていても指がかじかんでマニュアルでピントをうまく合わせられない。
ゆっくりと日が昇り、幸運な瞬間が訪れた。
暁光に頂が照らされた槍・穂の姿を撮影することができたのだ。
永年の夢、この写真こそが撮りたかった念願の一枚だ。

見渡せば北アルプスの全貌をはじめ、南アルプス中央アルプス御嶽山浅間山が見えた。
乾燥しているからだろう、こんな日はめったにないほど、視界の果てまで雲のない景色が広がっていた。
例年のようにもっと雪があれば違った写真が撮れたのかもしれないが、雪がないために視界がきいたのかもしれない。
自然はいつも未知数だ。なんどでも驚きと不思議な出会いがある。
次は、いつの日か、夕焼けの空の下に、名前の由来である朱く染まった八ヶ岳連峰の主峰・赤岳の写真を撮ることができればと密かに願っている。

(南峰から北峰への道、奥に北岳甲斐駒ヶ岳仙丈岳が見える)

南アルプスの峰、北岳間ノ岳甲斐駒ヶ岳

中央アルプス木曽駒ケ岳

御嶽山

(風が舞う乗鞍岳

浅間山

(主峰・赤岳、逆光で朝は影になる)

二日目はまばゆいばかりの快晴になった。
坪庭をのんびりと散策して昼前のロープウェイで下山し、またバスに乗った。
帰路、途中下車し小斉の湯の露天風呂に寄り道し汗を流した。ここの露天風呂は最高だ。
このあとまた茅野駅までバスに乗り、特急スーパーあずさに乗って帰ってきた。
帰りの指定席は売り切れで、自由席も大変な混雑だったがかろうじて座ることができたので、
車内販売の地酒を買っておつまみを遅い昼食にした。