中国湖南省の旅_プロローグ

今回の中国旅行は年金生活(まだ手元に届いていないが)が始まって初めての海外旅行だ。退職金がなくならないうちにどこかに行かないと行けなくなる。

皇位継承改元にともなう五月の十連休を避けて、最初にどこに行こうか迷った。

そもそも毎日が連休の年金生活者は、あえて混雑と費用の高いゴールデンウイークの時期に旅行に行く必要がない。

飛行時間のあまり長くないアジアのどこかにしたい。

カンボジアはどうか。アンコールワットを死ぬまでに一度は訪れてみたい。調べるとこの時季のカンボジアは暑くて観光には最も不向きな季節と書いてあった。

中国桂林はどうか。

水墨画漢詩に謳われる景勝地世界自然遺産。悠久の中国の象徴のような、だれでもが知っている観光地。とりあえず四月中旬のツアーを申し込んだところキャンセル待ちで、のちに満員で参加不能と連絡があり、次の機会にすることにした。

パンツフレットにあった世界遺産つながりで中国湖南省武陵源はどうか(とは言うもののこの地のことは全く知らない)。天門山観光と世界遺産を巡るゆったりしたツアープランがあったので申し込むと、即OKとなった。どうも参加者が少ないらしい。

天門山は漢詩に出てくる。雄大李白漢詩が有名だ。

望天門山 李白
門中断楚江開
碧水東流至北廻
両岸青山相対出
孤帆一片日辺来

天門山を望む 李白

天門(てんもん) 中断して楚江(そこう)開き

碧水(へきすい) 東に流れ北に至って廻(めぐる)

両岸の青山(せいざん) 相対(あいたい)して出(い)で

孤帆(こはん)一片(いっぺん) 日辺(じつぺん)より来る

この詩はいまからおよそ千二百年以上前の李白53、4歳の頃の作だ。

ただし帰国して調べると訪れた天門山はこれとは全く別の地域の山だった。

詩に詠われた天門山は長江(揚子江)が安徽省から江蘇省に入る直前の安微省蕪湖近くにあり「博望山」と「梁山」の二つの山をあわせたものだ。

湖南省の天門山はこの李白の天門山から南西に千キロ以上離れた場所にあり、まったく違う山だった。

ちなみに湖南省は中国第二の淡水湖である洞庭湖の南にあるので、この名がついた。北側には湖北省という省もある。

武陵源は切り立った岩の峰が続く世界自然遺産で、その奇観は桂林を彷彿とさせる。

ツアーには鳳凰古城の観光が含まれている。少数民族の古鎮で、年末年始に訪れた麗江古鎮のような観光地のようだ。由来や詳細についての資料が少なく、同行した現地ガイドから初めてこの地が麗江古鎮に次ぐ中国第2の美しい古い町並みを残す観光地であることを知った。

景色が綺麗で、趣と歴史がある場所であれば、訪れる場所はどこでもよかったのでこのツアーに参加することにした。

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詳細な「旅のしおり」が届いてから見てみると、連泊が含まれるゆったりツアーではあるけれど、飛行機の乗継やバスでの長距離移動の時間がとても長いプランだった。なんと上海浦東(プドン)空港では成田から目的地の張家界(ちょうかかい)までの合計した搭乗時間より長い7時間以上も乗継の待ち時間があったのだ。事前のパンフレットではわからなかった。