念ずれば通ず(蛸の話)

ここ数日ずっと、蛸が食べたいと思って過ごしていた。

寿司屋に行けば誰でもが必ず注文したいネタがあるに違いない。なんと言っても鮪がダントツの一位だろう。自分の場合は、その次にイカ、そして蛸である。美味いイカや蛸に遭遇したときは至福を感じる。

蛸は刺身も軟らか煮もイタリアン風のトマト煮もよいが、自宅でおいしい蛸を食べようと思うと、これがなかなかの難題だ。

スーパーマーケットで売っている蛸は、大概が外国産である。近所の店で売っているものははるばるモーリタニア産が多い。国産だと北海道産のミズダコが多いように思う。これはこれで美味いが、なんと言っても地物の真蛸がうまいのは間違いない。

地元湘南の海の蛸は明石の蛸にひけをとらないと思うが、店先に見かけることはまずない。ましてや生の蛸を町中の魚売り場で見たことはこれまで一度もない。逗子の小さな漁港のまえにある魚屋の水槽には生きた蛸が泳いでいるけれど、高価な贅沢品だ。

以前は天気のよい大潮の日に海に入って自ら捕まえることを無上の喜びとしていたけれど、最近はすっかりご無沙汰になってしまった。いつも行っていた磯浜ではムラサキウニが繁殖してしまい磯焼けで海藻がなくなって蛸が寄りつかなくなった。

そんなことを考えながら過ごしていたら、なんと・・・捕りたての生の蛸が届いた。

念ずれば通ずとはこのことだろうか(ちょっと言葉の意味が違うかもしれないけれど・・・)。

新鮮な蛸でも、さすがに生では食べられない。捕れたばかりを塩揉みしてぬめりを落とし、さっと茹でて刺身にして食べるか、蛸ご飯にして食べるのが絶品だ。

しっかりとした歯ごたえと豊穣の海の味。文字通りのまさに絶品である。

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蛸を肴に日本酒を飲むと心が南の海に飛んで行く。

南海の磯にもきっと蛸がいるのだろうけれど、何度か訪れた沖縄本島石垣島でこれまで姿を見たことがない。

三線が賑やかに鳴り響く石垣港近くの居酒屋で蛸を食べた記憶がないし、訪れるたびに覗く本島の公設市場でも蛸を見た記憶がない。

亜熱帯の真夏の磯は暑すぎて蛸を寄せ付けないだろうから、今頃がきっと蛸の生育にはちょうど良い繁殖期の季節なのではないだろうか。今なら浅瀬にいるのかもしれない。

いつか読んだ沖縄の旅行記に蛸捕りの話があったように思うが、青い空と青い海、白い海岸には赤黒い蛸が似合わないような気がする。

でも蛸は保護色で自在に体の色を変えられるので、珊瑚礁の海では白い姿に変身して泳いでいるのだろう。無地色の袴を穿いた人魚にみえるかもしれないと想像が広がる。

そんな空想に目をつぶると薄青色の透明な海にうかぶ島々の景色が見える。

ちなみに刺身で食べた後の蛸は柔らか煮にしていただいた。満足(危うく焦がすところだったけれど)。

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川平湾

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月桃の花

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写真を撮る家族のいる風景

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石垣島平久保崎灯台

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デイゴの花と烏

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竹富島の牛車

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波照間島の最南端碑

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炭酸水で煮て作る柔らか煮