広島風お好み焼きを食べる

二十年以上に及ぶ長年愛用したホットプレートが老朽化でテフロン加工がはげてしまい、何を焼いても焦げ付いてうまく焼けなくなってしまったので、思い切って新しいものに買い換えた。アマゾンの説明をよく読まず、誤ってひと周り大きなサイズのものを注文してしまった。大きくて収納は大変だが、「大は小を兼ねる」の謂われの如く使い勝手はすこぶる良好。

せっかくなのでこのところ連日、広島風お好み焼きを焼いて食べている。

初めて広島風お好み焼きを食べたのは今からおよそ二十数年前、姪の結婚式で広島県福山を訪れたときだった。結婚式を終えて、広島市内に移動し、原爆ドーム平和記念公園を観光したあと、市内の雑居ビルで食べたのが初体験だった。この雑居ビルは、いわばお好み焼き市場のように、たくさんのお好み焼き専門店が入っている、お好み焼きが看板で建っているビルだった。詳しい地理は覚えていないが、賑やかな繁華街のなかだったように思う。

座席に着くと、目の前の大きな鉄板で小麦の汁、キャベツ、豚のバラの肉、焼きそばと卵で、手際よく焼き上げられたお好み焼きに、この地の名物である「オタフクソース」をかけた粉ものができあがった。熱い焼きたてのお好み焼きは、はじめの味で感激したことを思い出す。

帰宅後、見よう見まねで広島風お好み焼きを何度も作ったが、いつの間にか作り方は忘却の彼方に消え失せ、最近はもっぱら関東風のお好み焼きに落ち着いてしまった。

関東風は肉や貝やイカなどの具をキャベツを一緒にして、小麦粉と水を加えてすべて混ぜ合わせてただ焼くだけだ。大変シンプルで、焼きそばはこれに参加しない。

先日、コロナがやや下火になったのを機に、妻の友人が自宅に遊びにきた。たまたまこの家内の中学時代の同級生が転勤で広島に住んでいたことがあり、奥が深い広島風お好み焼きを伝授して、我が家に復活の日が訪れた。

お好み焼きには、関東風、関西風、広島風と様々な作り方がある。食材も少しずつ違って、焼き上がりの味も異なっている。お好み焼きは庶民の日本文化の象徴だろう。孫達が遊びに来たらぜに焼いてごちそうしたい。きっと初めて体験するに違いない広島風お好み焼きに感激するだろう。