あこがれの水晶岳

仕事をほったらかし強引に夏休みを取った。
あこがれの水晶岳(黒岳が正式名らしいけれど無粋なので水晶岳と呼ぼう)を目指して裏銀座を歩きたい。
十数年前(1997年)の7月下旬、折立から入山し、薬師沢に下り、雲ノ平、高天原鷲羽岳、黒部五郎を周遊し折立に戻る山歩きに出かけた。
このとき鷲羽岳のすぐ近くなのに水晶岳を取り残してしまった。時間の都合と体力に余裕がなくてすぐ目の前なのにショートカットしてしまったのがずっと心残りだった。
いつか必ず登ろうと長い間思っていたが、北アルプスで登山口から最も遠い頂に立てる機会は来なかった。
去年は向かいの薬師岳からぜひその姿を眺めたいと思っていたが雨で叶わなかった。
前日発で道の駅「奥飛騨温泉郷・上宝」の歩道で仮眠。
8月4日朝6時、新穂高温泉の登山口から歩き始めた。
人はまばら、水曜日だからだろう。
荷物が重くてゆっくりゆっくりのペース。わさび平まで1時間半もかかってしまった。

小池新道を登りだすと超快晴で日差しが強い。

(穂高がよく見える。ジャンダルムがとがっている)
槍ヶ岳の頭が見えていたが秩父沢出合からイタドリが原、シシウドが原を過ぎたあたりで暑さでへばる。

鏡池に着くと雲が上がってきて逆槍は撮れず、気が緩みあまりに喉が渇いて山荘前のデッキでビールを飲んだのが運の尽き。

まだ正午すぎなのに歩くのがいやになり
少なくとも双六池の野営場まで、あわよくば三俣山荘まで行く予定を大幅変更、鏡平山荘に沈没してしまった。
涼しい山荘でのんびり午後3時間も昼寝してしまった。
8月5日(木)、2日目。
今日はなんとしても三俣山荘の野営場まで行かなければ水晶岳に辿りつけない。
5時5分鏡平山荘を出発。

(槍ヶ岳が綺麗に見える)
弓折乗越までの急登を過ぎて双六池を過ぎ

(朝の双六小屋とテントサイト、鷲羽岳の頭が見える)
三俣蓮華岳カールの巻道を通って10時40分に三俣小屋に到着。

鷲羽岳と分岐の三俣山荘)
鷲羽、ワリモ岳の向こうに水晶が見えた。
昨日の半日分を今日取り返さなければならないのでテントを張って、鷲羽岳を往復。

(鷲羽岳の山腹から、三俣蓮華岳を眺める)
暑い午後だった。

鷲羽岳の頂上で手を振る妻は元気)
鷲羽岳は二回目の登頂だ。雲が流れる中に正面に槍ヶ岳が見え隠れする。

鷲羽岳の頂上から北アルプスに唯一の火口湖を二度みることができて感激した。槍が雲に隠れてくる。

(這松のなかの三俣山荘、2階が展望レストラン)
脱水状態で三俣小屋に戻り二階の展望レストランに入りたちどころに500mlの缶ビールを飲み干す(2本・・・これがまたまた悪かった)。
しばらく経つと目が廻る、目の前がボーッとして、あげく寒気と震えが来た。

(三俣の野営場は水が豊富なキャンプサイト
夕食の準備もできずダウン、熱中症一歩手前でいきなりアルコールを飲んだので低血圧になったらしい。
そのまま食事もとれずに寝てしまった。
8月6日(金)、3日目。
昨夜が不覚にも体調不良になってしまたので朝起きてどうかなと思ったが、なんともない。

水晶岳の手前)
スポーツドリンクを沢山作って5時半に出発、黒部源流へ一旦下り岩苔乗越を越えて水晶岳に8時15分に到着。

(あこがれの水晶岳頂上直下)
あいにく向かいの薬師岳も反対側の槍ヶ岳も頂が雲の中にある。

そうそうに下り水晶小屋で一息入れた。

(水晶岳から下ってきて)

(険しい峰に建つ小さな小屋、いつか泊まってみたい)
小屋の主は作業中、若いお母さんと男の子が店番をしていた。一緒に写真を撮らせてもらった。

(1歳半の長男(かな?))

水晶岳から岩苔乗越への戻り道から見た水晶岳薬師岳、稜線は花が一杯だった)


(ウサギギクが大好き)
まぶしい光の中、暑い沢沿いを下る。
黒部源流の水は冷たかった。

(源流の碑)
昼前に三俣小屋前の野営地に戻り一息入れて13時に撤収して双六の野営場へ出発。
スポーツドリンクの効果か、元気。
双六山荘直上の双六岳岳分岐までの斜面は残雪と山の花々で美しい道だった。
15時半に双六小屋に到着、すぐおでんとビールで乾杯。
山荘前のベンチは中高年のビアガーデン状態、みんな一日の仕事を終えて充実していたのだろう賑やかだった。
無事水晶岳に行って来れた、よかったとしみじみ実感する。
キャンプ地のテントでウイスキーを飲み最高に幸せ気分。あたりはガスで景色は見えなかった。
8月7日(土)、4日目。
今日は下る日、名残惜しくてぐずぐずとして3時に起き6時半前に出発。

(笠が岳を正面に観ながら双六池野営場に別れを告げる)
どんどんと下って行く。鏡平に8時10分、わさび平に11時5分、新穂高温泉に12時40分に着いた。足が棒になる。
新しくできた中崎温泉に入って体重を測ったら4kg減っていた。
天気に恵まれ、熱中症になりかけ、花畑を歩き、沢の水を沢山飲み、無事今年の夏休みが終わった。
翌日の朝、自宅で測ったら体重が戻っていたのが残念だ。