京都と奈良の桜めぐり

先日、NHK(のBS放送だったと思うが)で、日本人にとって春の到来を象徴するのが桜の開花だとすれば、
イギリスでは水仙の花が春を告げる花として心待ちにされていると
京都・大原の古民家に住むイギリス生まれの婦人が話していた。
国によって風土も季節も異なるのでイギリス人の気持ちも理解できる。
でもやはり日本人には桜は別格だ。

今年は桜の花盛りの期間がながく、先週末、生まれて初めて大人の団体旅行に参加して旅に出かけた。
参加者の平均年齢は甘めにみても65歳は過ぎている。まさに大人の旅行だ(・・・老人かな)。
一泊二日の京都・奈良の桜巡りの旅だった。
一日目は朝の飛行機で伊丹空港に行き、そこからバスで京都に入って世界遺産の町に咲く桜を愛でた。
仁和寺の御室桜、上加茂神社の巨大な枝垂桜、平安神宮神苑に咲くしめやかな桜の木々、花弁舞う哲学の小径の散策、夕闇迫る丸山公園の枝垂桜が一日目のコースだ。

(ツアー会社の旗と丸金とかかれた真っ赤な団扇が目印の「大人の旅」)
車窓から眺めた賀茂川の辺の桜並木も気落ちがよさそうだったし、まったく予備知識のない京都の町の桜見物だったが、訪れたどこの桜も見事だった。
特に、仁和寺の御室桜の見事な純白の林には感動した。ここの桜は遅咲きで、京都ではここが満開になると花見の季節が終わるだそうだ。



仁和寺の純白の御室桜)


上賀茂神社大枝垂桜と大鳥居)


平安神宮神苑の景観)

(静寂な桜散る哲学の小径)

日が暮れてから奈良に入り、薄陰になった春日山の麓のお土産屋の二階で夕食を摂り、宿は猿沢池にほど近いホテルサンルート奈良だった。もう鹿の姿は見られなかった。
寝酒に近くのコンビニで買った、何十年ぶりかのトリス・ウイスキーオンザロックがうまかった。
二日目が今回のツアーの目玉、吉野山の桜見物だった。
朝はいつもの通り四時過ぎに目が覚めて、まだ薄暗い静寂の奈良の町を散歩した。


あたりが明るくなってくるとまるで鐘の音に誘われるように、どこからか鹿が集まってきた。
猿沢池を八時に出発して、二時間余りのバス旅行で吉野山に着いた。
汗がにじむほどの快晴になった。
下千本の駐車場あたりの花はすっかり終わっていたけれど、中千本、上千本は運よく満開に遭遇した。
歴史的にも有名な吉野山の千本桜は以前からずっと訪ねてみたい場所のひとつだった。でも四月は年度の初めでこれまでなかなか訪れる機会がなかった。
今回もはじめは個人旅行を計画したが、今年は桜の開花が遅く、団体旅行に空きがあったので、だめもとでクラブ・ツーリズムに予約を入れた。
これが幸運にもドンピシャの桜の満開に当たったのだ。
自由行動が限られることがツアーの難点だが、3時間半の自由時間が予定されており、バスを降りて上千本まで歩いて往復できたのがよかった。





弘前をはじめ日本各地の有名な桜名所のソメイヨシノとは違って、ここの桜は山桜だった。シロヤマザクラが主体だそうだ。
想像していた景色とやや異なっていたけれど、山の斜面を埋め尽くす満開の桜の森はまさに値千金、風に吹かれての散策はとても素晴らしい体験だった。


ひと休みして景色を眺めながらにぎり飯を食べ、ビールを飲み、金峰山寺の参道に軒を連ねる出店では濃厚な冷ややっこや香ばしい焼きタケノコを食べたのも思い出に残る体験だった。

(時間の都合でゆっくり観覧できなかった日本で二番目に大きい木造建築らしい蔵王堂)

(ここらはタケノコが名物らしい)
今回の旅のもう一つの目的は新たに購入した望遠レンズの試し撮りだ。
重く大きなレンズだが、ぬけの良い綺麗な写真が撮れるはずだ(腕次第)。
吉野山の千本桜は使い初めに持って来いの被写体だろう。
帰ってきてこれからしばらく写真の整理が楽しめる。
往復飛行機と観光バスで訪ねた二日間の短い旅だったけれど天気に恵まれた思いで深い旅になった。
持ち帰った残りもののトリスを自宅で飲むと、旅の味がしておいしかった。