高遠城址公園の桜見物

長野県高遠城址公園の桜は天下第一だそうだ。
高遠には以前に二度ほど立ち寄ったことがある。
一度目はかれこれもう二十数年前のことになる母を連れた夏の旅行だった。
二度目は南アルプスに登った帰りだったと記憶している。
城址公園としてはこじんまりとした、これといった特徴のない印象だったが、
その頃すでに桜が有名で、一度花の咲く時期に訪ねてみたいと思っていた。
木曜日の夜に家内からここの桜が今満開だと聞いて、思い立って先週に引き続き
この週末も桜見物に行った。
今回は、ずっと車庫に置いたままになっている愛車に乗って行くことにした。
ほぼ一か月ぶりの運転なのでバッテリーが上がってしまっていないか心配だったけれど、
一発でエンジンがかかりひと安心(SUBARU恐るべし)、朝四時に家をでた。
まだ日の明けない暗い高速道路を走るのもずいぶんと久しぶりだ。
空いていたので中央道を諏訪南インターチェンジで降りて一般道を走ってゆくと、
高遠の町が近づくにつれ道沿いにたくさんの桜が咲いていた。

三時間余り走って朝の七時を過ぎたばかりの高遠城址公園に着くと、
すでの全国のナンバープレートを付けた車で駐車場がいっぱいなのには驚いた。
気温が10℃以下で、上着がないと寒い。
高遠城址公園の桜はコヒガンザクラで、花はソメイヨシノより幾分小ぶりだが、赤味が強い。
公園は桜色一色に覆われ、花弁の陰に潜む花の精が吐き出す妖気があたりに漂い、まさに花酔いしそうだった。

(天下第一桜の大きな石碑)


この桜は明治後半から植えられるようになり町の人たちが手塩にかけてこれほどまでにした。
薄雲りの天気だったが本丸跡から中央アルプスの山々や南アルプス仙丈岳が綺麗に見えた。
花を啄みにコゲラが飛んできたが、ピントを合わせきれず写真に撮れなかった。
すでに桜祭りが終わってから迎えた満開だったけれど園内にはたくさんの出店が出ており、
とくに桜餅の店の前は長蛇の列だった。

城址公園から眺めた高遠の城下町)

空木岳と宝剣岳木曽駒ケ岳とカール)

南アルプス仙丈岳

二時間近くうろうろして桜見物を堪能したあと高遠駅(バスターミナル)まで城下町散策すると
日本酒・黒松仙醸の蔵元があった。伊那谷の日本酒として有名な仙醸の蔵元が高遠にあるとは知らなかった。記念に一升瓶を一本購入した。


まだ朝の十時前だが小さな城下町の観光はすぐ終わってしまい、このまま帰るのも寂しいので
暖簾の出ていた蕎麦屋で高遠蕎麦を食べることにした。
蕎麦は絶品だったが、つけ汁の味噌だれとクルミだれはどちらもいまいちだった。

もし渋滞で時間がかかったら一泊して帰ろうかとも思っていたが、思いのほか早く桜見物が終わってしまい
のんびり道の駅に寄り道しながら帰ることにした。自宅には午後二時半過ぎに帰り着いた。酒さえ飲まなければ、十分日帰りできる桜見物だ。
走行距離は往復で450キロの、久しぶりの長距離運転だった。
高遠の桜は郷土の誉れ、天下第一桜と刻んだ大きな石碑もあったので、
帰ってきて調べてみると、桜の三大名所は弘前公園吉野山高遠城址公園で、
一本桜では、福島の三春滝桜、岐阜の薄墨桜、そして帰途に看板の前を通り過ぎた山梨県北杜市神代桜であることがわかり、
近くを通ったのに神代桜を見過ごしてしまったのが残念だった。
今回の旅で不慣れな望遠レンズで初めて山を撮った。
ソニーのレンズが思いのほか電気を消費することが分かった。
いつも交換用の予備を2個、全部で3個のバッテリーを携帯しているが
3個すべて使ったのは今回が初めてだった。長旅に行くならもっとたくさんの予備が必要だろう。