近未来を考える

今日から五月、今日は八十八夜。気づかぬうちに夏が近づいている。

窓を開けると心地よい風が吹き込んでくる。まさに風薫る五月だ。

COVID–19 一色の毎日なので、少し頭を切り替えて近未来について考えてみたいと思う。

緊急事態宣言が出されたあと、社会も経済も停滞している。きょうの午前中に政府は専門家会議を開きこの先の対応について協議したと報道された。今月六日以降も緊急事態は解除されずこの状態が続くことになるようだ。

すでに新学期を迎えて一ヶ月が過ぎても学校の授業が始まらない。こども達は毎日どうやって暮らしているのだろう。欧米や近隣の韓国ではいち早くインターネット授業が始まったと聞くが、わが国内の対応は鈍い。せいぜいユー・チューブによる一方通行の授業の発信が行われているぐらいだ。未来を担うこどもへの教育現場において通信用パソコンさえ整備されておらず、百年前と同様に紙文化が通信手段を担っている。技術立国のはずこの国が実際は先端技術の社会的応用に関してはすでに後進国になってしまったことを思い知らされる。皮肉にも想定外の社会封鎖がこの現実を国民の多くに知らしめる機会を生み出した。

非常事態だからこそ、これから迎える近い将来について考える動機が与えられたと前向きに捉えることにしたい。

近未来を左右する二大技術は生活圏の隅々に及ぶ情報ネットワーク環境の整備とモバイル環境を担う 駆動の要としての電動モーター技術の革新だろうと思う。

家庭内を含め生活環境におけるIoTの普及によってひとの営みの多くがネットワーク化されるはずだ。単なる通信手段としての情報ネットワークの整備に留まらず、いつでも、どこでも、誰でもが精緻な情報ネットワーク網の中で暮らすことになるに違いない。高齢者の見守りをはじめ人々の日常生活における健康管理が住まいを主とする生活環境の中で自動化され、誰が何時に起き、一日に何回トイレに行き、何を食べ、どれぐらいカロリーを摂り、どのようなテレビの娯楽番組を見るなど、暮らしの全てが情報化される社会がそれほど遠くない近未来に来るに違いない。遠赤外線や近赤外線を始め目に見えない光子線探知機構の中で日々暮らすことになるのがおそらく間違いない近未来の姿だろう。

自由主義の維持とプライバシーの保護について、人口減少にともなう人手不足が深刻化する保守的なこの国でも大きな変革が起こる。伝統文化の継承のための新たな集団防衛や社会秩序の維持の名目のもとにこれらは 再定義される日が必ず来るだろう。ひとつひとつの技術はすでに完成している。これらを社会としてどのようにネットワーク化のために活用するか、すでに水面下では議論が始まっている筈だ。出生率の減少や労働人口の減少の中で、誰が、何を、どのように扱い、その費用をどのように確保するかを勘案すると情報の集約化はほぼ間違いのない近未来の姿だろう。新たな時代を切り開く逞しいこども達を育てるには今以上に情報化ネットワークに対する理解と対応が喫緊の課題であることに国民一人一人が気づかなければならない。

あまり知られていないが、すでに現在の電気の使用量の六割はモータの駆動によって消費されている。冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電気自動車や電車、さまざまな物が作られる工場におけるロボットアームなどがその主体である。

情報の共有とともに近未来で重要となるのは人や物などの実体の移動だ。移動のためには自動車にしろドローンにしろ駆動のための動力が必要である。動力はモータによって供給される。モータは産業の「コメ」であるばかりかすでに社会生活の「米」なのである。

人は感性の生き物である。二次元のバーチャルな体験を応用した擬似三次元環境では多くの人々は満足を実感できなくなるに違いない。本物のみが持つ感動や体験や記憶は今後これまで以上に重要な人生の営みのひとつとなるだろう。偽物体験が手軽になることと同時進行で実体験が貴重になる。そのためには人自身が移動しなければならない。あるいは直に触れて体感できる物の存在が必要である。

ほぼ全ての移動手段は電動になるだろう。化石燃料を用いた内燃機関は歴史的産物になるのは確実だ。

より手軽な電磁波による充電法や地球環境に優しい発電方法の導入によって人は今以上に駆動体としてのモータに依存するようになる。老若男女、縁の下の力持ちとしての電動モータによって生活を維持するようになるに違いない。人の移動ばかりではなく人工知能やエネルギー効率の改善によって窓を開けると空から物が届けられる時代が現実の光景になるかもしれない。同時に加齢によって衰えた筋力や体内循環を超小型のモータによって補うようになる。高齢者住宅では扉の開閉も、おそらく全てモータの駆動によって自動化される。家事を担うのも今とは違う形のロボットの仕事になるだろう。炊飯器や電子レンジが革命をもたらしたように台所仕事は動く新たな駆動体によって行われるようになるだろう。

「静」から「動」へと歴史は動く。誰でもがモータの力で命の営みを維持するようになる。需要が新たな技術革新の原動力となって、人類の最も偉大な発見が原子力ではなくて電力であることに改めて気がつく時が目前に迫っている。

もし若い研究者が新たな課題にチャレンジしたいと思うのであれば電力消費の担い手であるモータの技術革新に取り組んで欲しいと願う。

澄み切った皐月の空を眺めながら、ぼんやりと近未来について空想してみるのも悪くない。

晩春間近、冷奴と冷たい純米酒が美味い季節になった。

はてさて、増え続ける体重をどうするか。現実に返って、今するべき最大の課題は肥満対策である。

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(鯖の味醂干しと冷奴、皐月の純和食)

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(肥満対策は筍ご飯と村上の塩鮭、小松菜の味噌汁)