竹富島花夢想

立春を過ぎても寒波の襲来で寒い日が続く関東を離れて常夏の南の島に避寒の旅に出た。

全日空石垣島に飛びさらに観光船に乗って海を渡り花の島、竹富島に着いた。

あちこちに亜熱帯の花が咲く。アダンやバナナやパパイヤの実がにぎやかに実り、白い道とオレンジ色の屋根を引き立てる。

最近星野リゾートの経営する新しい高級ホテルができたけれど、せっかくなので司馬遼太郎の「街道をゆく」にも登場する島一番の老舗旅館に泊まって羽根を伸ばすことにした。宿はこの島の中心部にあり目の前が島で唯一の郵便局だ。

常夏のはずなのに予想に反して気温が低い。薄手のシャツ一枚では寒い。

島に渡った昨日も、どんよりと雲に覆われた今日も最高気温は15℃前後しかない。しかも強風が吹く。島を訪れる観光客もまばらだ。グラスボートは運休で、いつもなら賑やかに三線を奏でながら観光客を満載した牛車が連なって白い珊瑚の砂を敷き詰めた道を通る光景もあまり見かけない。寒い静かな竹富島だ。

とは言え、島は花でいっぱい。美しい砂浜を目指して歩くとあちこちに亜熱帯の花が咲く。

竹富島は花の島。ほとんどの花の名前はわからないけれど、名前なんてひとの都合でつけられたもの。花にとっては無関心で、花の命と何の関連もない。命の重みと生き物の決まりに従って、美しい眼前の花を見ることができれば、それこそが一期一会、貴重な出会いに違いない。

島を離れる四日目の朝、ようやく青空が広がって暑くなりそうな気配になりました。常夏の冬は結構気まぐれでした。