トレド_スペイン瞑想旅行

 

スペインは不思議の国。

とはいえ不思議の国は日本からは遠い。

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成田を5月10日(金)午前11時5分に発ったイベリア航空直行便は14時間半でマドリッド(バラハス空港)に着いた。現地時間ではすでに夕方の6時半になっていた。

夕方なのに陽の光が眩しい。まだ完全に昼間の陽射しだ。空港からバスに約30分ほど乗り、ホテルに直行(TRYP MADRID AIRPORT SUITES)。バスを降りると殺風景な市外のホテルの周囲にはなにもない。視界には道路と倉庫と原野があるだけだった。

マドリッド初日のツアープログラムには夕食が付いていないので、縮こまった体を伸ばすこともかねて少し散歩をし軽食でもとりたいと思っていたが当てが外れた。行くところがない。はやばやと持参のウイスキーを飲み、じっとホテルの部屋で過ごす。

夜10時過ぎになってようやくあたりが暗くなった。

翌朝、5月11日(土)。夜明けが遅い。しかし太陽が昇ると途端に陽射しが強い。情熱と灼熱の国に来たことをたちまち実感させられた。乾燥している。湿気がないのだ。乱反射せず直接光が肌を刺す感じ。

透明度の高い空気を透して、窓からは轟音とともに頻繁に空港を飛び発つ飛行機が見えた。

スペイン二日目の日程はバスに乗ってトレドを経てコルドバまで行き、泊まる。

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 古都トレドはスペインの波乱万丈の歴史を象徴する場所だ。現地ガイドのは話を聞いてそう思った。

先入観を持たず視界に飛び込んできたものをそのまま受け入れたい。

トレドはスペイン国土のほぼ中央に位置し、変遷する宗教と政治と軍事の中枢となってきた都市である。

スペインの歴史は有史以前に遡る。

アルタミラ洞窟の壁画のことは歴史に疎い私でも知っていた。中学校の美術の授業で習ったからだ。しかし、今回の旅行までそれが、スペイン北部にあるとは全く知らなかった。ヨーロッパのどこかの山の中という程度の認識だった。

人が生きていれば必ずその証が残る。日本でいえば貝塚や住居跡の遺跡がそうだ。国内でも最近、つぎつぎと新しい遺跡が見つかっている。歴史は生き様の記録に他ならない。ささやかな自らの短い人生の記録には残すものがないことはともかくとして、歴史遺産は見るもの、聞くものに切々と問いかける生きていた息吹の迫力がある。そこで生きた人、そこで死んだ人。日常として繰り返す人々の毎日の生活。

世界遺産となっているトレドの旧市街を歩くと、ここで繰り広げられたカソリックイスラムの殺戮の歴史や寄る辺となる宗教の力が問わず語りに迫ってくる。

城壁を抜けて遥か昔に作られた坂道を辿り、狭い路地に続く広場で眩しさに視界を失う。数千年の時空を飛び越える。同時に1000年の時間が迫る。

群青の空に尖塔がシルエットとなって浮かび上がる。静寂な祈りと往来の喧騒の中に中世の空気が流れている。

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(カテドラル・大聖堂)

画家エル・グレコ(この呼称はギリシア人の意味、本名はドメニコス・テオトコプーロス)。ギリシアクレタ島生まれ。

画面には独特の縦方向に引き伸ばされたデフォルメ(マリエリスム)と強い筆跡に彼の思いが残る。宗教画としては異端に近いギリシア生まれの彼の絵画がスペインを代表する芸術家の作品として再評価されたのはごく最近のことだ。彼が生きた時代の宮廷の上級貴族には彼の個性と強さは理解されず、この宗教都市を安住の地として生涯を終えた彼は、ある意味で幸せな画家だったといってもよいだろう。彼がこの街の住民に愛され、彼自身がこの地を愛したことが瞬時に理解された。

 サント・トメ教会には代表作の一点として挙げられている「オルガス伯爵の埋葬」がある。作者である彼自身も絵に描かれていた。

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(近くのカフェにあった複製。本物は撮影禁止だった。名物の甘い菓子マサバンを食べた)

スペインが不思議に思えるのは原始から時間が澱となって降り積もり、多彩な異文化が衝突と融和を繰り返した結果、異界となって現在に至るからだろう。

大都会マドリッドを観光せずに、直行してトレドに来たのは正解だと思う。

この国の持つ全てがここに集約されていると感じた。

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(王宮・アルカサル遠望)

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(タホ川の渡し舟)

【トレド】

スペイン中央に位置する古都。首都マドリッドの南西約70キロに位置し、人口は約八万人。数千年以上遡る有史以前にすでに人が住み、古代ローマ帝国時代から長くスペインの中心的都市としてユダヤ教キリスト教イスラムを経てキリスト教に回帰して栄えた町。三方をタホ川に囲まれてた美しい旧市街には色濃く中世の景観が残る。スペイン・カソリック教の中心地として栄え、現在に至る。