四万十の風がとどく

四万十川の河口近く、赤鉄橋のたもとで仕事をする神経内科医、小笠原望氏から句集が届いた。

四万十川の四季折々の写真と川柳、明るいイラストを載せた小冊子の表紙には「フォト川柳 聴診器の向こう側.四万十の色 何億の生と死と.小笠原望、森千里、小笠原睦子」と表記されている。

ページをめくると四万十川をわたる四季の風が吹いてくる。

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朝日新聞社発行の月刊冊子「アサヒスタイル」に川柳と四万十の風景写真を載せたエッセー「診療所の窓辺から」を連載する小笠原氏は、すでに大学に入学する以前からせっせと川柳を書いていた。いつから川柳に手を染めていたのか詳細は知らないが、若い頃から彼の書く川柳には独特の生命観が宿っていた。すでに50年以上の句歴をもつ彼の目線は、青春時代の若々しさをそのままに古希を迎えている。老境の枯淡とは次元が異なり、彼の紡ぐ句には、命がほとばしり、生きること、定めの仕舞い、誰もが共感する日々の輝きが高らかに歌い上げられている。

2009年から続く連載エッセイの写真を担当していたのが、彼が勤める大野内科医院の事務長の森千里氏だとは送られてきた句集の「あとがき」を読んで初めて知った。句集は彼とともに医院の運営に苦楽を尽くした森氏の定年退職を機に、発刊されたという。イラストは彼の妻、睦子さんの手による。編集は、河田由紀子氏という方で、この方もこれまで何冊も出版されている彼のエッセー集の編集に携わった方だという。まさに望チームの絆でむすばれた句集だ。

50ページの小冊子ではあるけれど、手に取ると、ゆっくりと、そして確実に進む時間の温もりを感じた。