雑草という植物

いきなりの真夏日が続いたあとは梅雨入りを思わせる雨となった。奄美諸島や沖縄は梅雨入りしたようだ。早々の入梅かと思ったが、例年より少し遅いそうだ。

五月は一年で最も爽やかな季節。晴れた日の散歩にはこれ以上の時季はない。あちこちの植え込みには紫陽花が咲き出している。

視線をさらに下げて道端を覗くとさまざまな草がささやかに小さな花を咲かせている。雑草と不名誉に呼ばれる草ぐさにもひとつひとつ固有の花がある。

最近、AY氏に紹介されて面白い図鑑を手に入れた。「美しき小さな雑草の花の図鑑」と続編の「もっと美しき小さな雑草の花図鑑」(山と渓谷社発行)。

肉眼では見落としてしまいがちな小さな草の花が拡大写真になって掲載されている。

ヘクソカズラ(屁糞葛)、オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)、アレチヌスビトハギ(荒れ地盗人萩)など、なかにはなんとも無粋な名前を付けらた草もある。命名者に何故この名のか聞いてみたくなる。親しみと愛(いと)しさをもって付けられた名前であればいいのだけれど、どこにでも生えていることで蔑まれてこの名前であれば憐れみと憤りを感じてしまう。

名前は人の都合でつけられた符号でしかない。雑草という名の植物もないし、名もない草という名の植物もこの世にはない。輝く命があるだけである。

私たち、庶民という名の市民は名誉な呼び名のなのだろうか。散歩の途中にぼんやりと考え込んでしまうと、ポツポツと雨が降ってきた。梅雨間近。