京都大阪三泊四日旅

紅葉の季節になったので、何はともあれ関西観光に出かけた。

初日の京都では圓光寺の紅葉観光、知恩院の庭園見物、二日目は嵐山の渡月橋散策と川沿いのどん詰まりにある大悲閣千光寺参拝。午後から大阪に移動して通天閣を仰ぎ見て新世界で串かつで夕食、三日目は堺に脚を伸ばして仁徳天皇陵履中天皇陵を散歩、午後は大阪城に登り、夕食は肥後橋のホテル近くで薄味の関西風おでんを食べた。四日目の午前中に京都に戻り北野天満宮で孫のカン君の高校受験を間近に控えて合格祈願お守りの入手と雨に打たれてながら参道で朝食代わりにお好み焼きとたこ焼きを試食。昼の新幹線に乗る前に改札口脇の売店で以前から話にきいていて一度は食べてみたかった551蓬莱の豚まんを買い込み、ついでに目にしたちまきとシュウマイも買って車中で缶ビールを飲みながらお昼にした。自宅には午後2時前に着いた。

観光シーズン真っ只中の京都はどこも観光客で溢れ、市営バスはまさにすし詰め状態だった。きっと地元住民にとっては押し寄せる観光客は迷惑以外の何者でもないだろう。コロナ禍がひと段落した観光地には一時は姿を見なかった中国やヨーロッパからも多くの観光客が訪れ、バス停もコーヒースタンドも、何処も長蛇の列だ。

大阪ではちょうど阪神の優勝パレードが終わった直後だったので、ここも人人人でごった返しだった。38年ぶりの日本一に輝いた地元チームのパレードに歓喜の涙と雄叫びで喉を枯らしたに違いない黄色いユニフォームを着込んだ熱狂的なファン達はみな笑顔に溢れていた。

大阪でもけたたましく大きい声を張り上げてまるで喧嘩腰のように話すアジア人の観光客だらけだったが、大阪城は意外に空いていてすぐ入城できた。

こたびの京都の紅葉は圓光寺の庭園。たまたま出発数日前の朝日新聞天声人語にこの寺の紅葉が見事と書いてあったので、今回の紅葉見物はここにした。小さい寺ながらも見事な景色だった。やっぱり古都の秋は素晴らしい。一度に色々な場所を尋ねると印象が混乱するので京都の紅葉狩りの旅では、一箇所だけを訪れることをルールにしている。

朝早くの渡月橋は静寂に佇む。朝一番の橋上には観光客はまばらだ。嵐山の紅葉はモヤがかかってぼんやりしていた。それはそれで風情があってよかった。保津川では大きな白鷺や太った青鷺が小魚を捕まえ朝食にしていた。川が豊かなのだ。

朝、小倉山の展望所まで登り向かいの嵐山の紅葉を眺めて、また川面まで下って渡月橋を渡り川沿いの道を上流に向かって歩いて行くと突き当たりに大悲閣千光寺への登り道があった。ひっそりとして嘘のように人影もまだらだった。先程展望所から見えた朽ちかけた寺の観音堂から向かいの小倉山の紅葉や京都を取り囲む峰々が眺望できた。

嵐山の山中にある千光寺の真下の川沿いには真新しい小さな舟付場のある星のリゾートの旅館があった。以前は別の名前の旅館で星のやではなかったように思う。

昼近く帰り際の保津川の川面には観光船に混じって緩やかな流れに浮かぶ手漕ぎのボートがいっぱいでまるでお堀のボート場のような混雑になっていた。でも、それはそれで秋の景色になっていた。

大阪観光の目玉は威風堂々、立派な通天閣だった。あたりを威圧するかの如く角ばった塔の建つ新世界には関東ではもう見なくなった昔懐かしい射的の店が軒を連ねているのには驚いた。コテコテの関西に心が躍る。長年の憧れの通天閣だが、入館料がひとり1200円とバカ高かったので眺めるだけで満足して、若者達で賑わう新世界界隈の串カツ屋に入って夕食にした。大阪名物の串カツ発祥の店、元祖「だるま」新世界本店に入りたかったが、間口がニ間ほどの数人でいっぱいになるカウンターだけの小店で入れず、そばの由緒あり気な「ぎふや」に飛び込みで入った。なかなかどうして美味しい串揚げを堪能できた。以前に食べた串の坊法善寺本店と遜色ない味だ。料金は比べられないほど安い。新世界は下町の風情満開。

お好み焼きに並ぶ大阪名物は串カツ。油の大鍋の前に立って次々と来る注文に答える店員さんはアジア系外国人だったが、手際よく注文を捌いていて見ていて気持ちよい働きぶりだった。しっかりお給料を払ってもらって欲しいと思った。

小学校の教科書にも載っている、一度は来てみたかった巨大な仁徳天皇陵。本当は誰の墓なのか詳細は謎に満ちた世界最大の墓陵の拝所では観光ボランティアが熱心に説明をしてくれた。ここは宮内省の管理地だが、すぐそばのビジターセンターのシアター映像は説明が貧弱で、ただ皇陵の上空からの風景を映し出すだけでつまらなかった。世界遺産に付設されたこの公共の施設には、おそらくはここを訪れるほとんどの人が見学に足を運ぶであろうから、もう少し凝った内容と重厚な工夫が欲しい。むしろ近所のパン屋で買った前方後円墳を模った名物菓子パンの方が珍しく、微笑しかった。華麗な日本庭園のある大仙公園を隔てたもうひとつの皇陵の履中天皇陵にもお参りした。ふたつの古墳は当時の堺湾を航行する外国船から眺められたという。国威発揚の象徴だったのだ。古代史のロマンを今に伝える貴重な遺産だ。

幾度となく訪れている大阪だが、未体験の大阪城見物。最上階からは高層ビルの間に前日訪ねた通天閣が見えた。ここはお城の形をした現代博物館だった。

今回の旅行で最も感激したのは初日に泊まった京都駅前の老舗旅館松亀だった。今はもうない実家に帰ったような昭和の懐かしい匂いがする宿だった。簡素な作りの日本家屋だったが、おもてなしの心に溢れた温かい対応が心に残った。京都の定宿は今度からここにしたい。

意外だったのは帰りの車中で食べた551蓬莱の豚まんがそれほどでもなかったことだ。ずっと一度は食べたいと思っていたけれど、値段も一個210円とお手軽なせいか、横浜中華街の華正楼や江戸清のものとは全く違うものだった。豚まんはやっぱり横浜に限る。シュウマイもイマイチだったが、ちまきはそれなりに美味かった。

北国ではもう雪のチラつく毎日となり、食欲の秋ももうすぐ終わりに近づいている。年とともに寒さが身に染みる冬を間近にして、さてこの次はどこに行きこうと考えている。